教育福島0095号(1984年(S59)10月)-050page

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教育センターから

 

児童生徒の耐性に関する研究概要

 

はじめに

 

児童生徒をとりまく社会環境の急激な変化は、成長期にある児童生徒はもとより、教育本来の目的である豊かな人間形成に深刻な問題をなげかけている。

特に、非行の低年齢化、初発型非行の増加、そして問題行動の多様化などを考えるとき、生徒指導の根本的な見直しとその対応は、重要にして緊急の課題といえよう。

先に、小・中・高校にわたって行われた生徒指導充実のための学校運営点検も、生徒指導に関する問題点を明らかにし、課題解決を目指した一つの取り組みであるとみなければならない。

このような現況にあって、当教育センターとしても、教育現場の指導の一助に資することを目指し、プロジェクトによる「生徒指導に関する研究」に着手し、現在その研究に取り組んでいるところである。以下研究の経過とその概要について述べることにする。

一、研究及び主題設定の趣旨

昭和五十七年度に総理府青少年対策本部が刊行した青少年白書の「青少年問題の現状と対策」の中で、青少年の問題行動増加の背景・要因と深いかかわりがあるとみられる現代青少年のパーソナリティについて、次のようにまとめている。

○ 今日の青少年には、耐性の欠如、依存性、自己中心性が広くみられる。

○ 非行の一般化傾向にもみられるように、非行等の問題行動が、特定の環境にある青少年によってのみ生み出されるのではなく、現代青少年に共通する。パーソナリティに深いかかわりがある。

本研究は、このような現況に基づいて、児童生徒の性格特性、特に、「耐性」について、県内児童生徒の実態をとらえ、分析と考察を加え、教育現場の指導の一助に資するという趣旨のもとに、「児童生徒の耐性に関する研究」という主題を設定した。

なお、昨年度は、本研究に向けて県北地区の小学校四校を対象に予備調査を実施したので、参考までに結果の概要を表2に掲載したので参照されたい。

二、研究の方向性

これまでに、生徒指導の本質にかかわる理論及び具体的な指導を進める際の資料等は、文部省、県教育委員会、市町村教育委員会などから、数多く発刊されてきているところである。

したがって、本研究では、研究の独自性をもたせるため、県内における児童生徒の「耐性」についての意識・思考・行動などの実態をできる限り的確にとらえ、分析することにより児童生徒を正しく理解し、適切な生徒指導の実践やその改善に役立つことを意図した調査研究の手法によって進めようとするものである。

三、調査の実施に当たって

(1) 耐性の概念把握

本研究の基盤となる「耐性」という概念をどのように把握すればよいかが一つの課題であったが、文献によると「耐性」をおおよそ次のように定義している。

○ 現代教育用語辞典(第一法規)

耐性(トレランス)とは、ものごとに耐えうる力のことで、心理学用語としては、フラストレーションに耐えうる能力という意味で、フラストレーション・トレランス(欲求不満耐性)と呼ばれている。

また、人は欲求をもって生活していく過程で、必ずしも欲求が満足されるとは限らない。このようなとき、適応に失敗したり、不適切な反応をすることなく、欲求不満に耐えうる能力が必要である。

○ 生徒指導用語辞典(第一法規)

耐性(トレランス)とは、欲求理論から出てくる概念で、不満に耐えうる力をいう。

人は、その生活を充実し、自己実現を図るために、さまざまな欲求をもつ。ところが、その欲求は、つねに充足されるとは限らない。

充足されないと、不満な感情がおこる。それが欲求不満であり、問題行動や人格障害の原因と考えられるが、不満がそのまま障害となるわけではない。

ある程度まで人は、それに耐えうる力をもっている。それが耐性である。

この二つの定義をもとに、本研究では、「耐性」の概念を次のようにとらえた。

 

耐性とは、何らかの目標(目標志向)に向かって行動を起こしたとき、それが、外的あるいは内的条件によって阻害され、自己の目標達成や満足が得られないことがあっても、その条件に耐え、望ましい生活をしていこうとする、あるいは、できる力である。

 

(2) 調査項目の構成要素

調査項目の構成は、本研究でとらえたこの「耐性」の概念に基づき、耐性を促進、あるいは阻害すると思われる特性を選び、それぞれの特性と関連する要因を表1のようにとらえ、設問構成を図り調査することにした。

調査のための具体的な設問構成に当たって、先ず調査の場面は、児童生徒

 

 

 


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