教育福島0096号(1984年(S59)11月)-014page
が減少しており、本年度の事業を実施するにあたり啓蒙の意味で全女子教職員に小冊子を配付したところである。
是非、受診されるようお勧めしたい。
ウ へき地教職員に対する健康管理事業
へき地に勤務する教職員の特殊性を勘案し次のような健康管理事業を実施している。
(ア) 検診車による検診
教職員の資金により運営している山形中央病院の検診車が勤務地を巡回し医師の内診、尿一般検査、胃部間接撮影、肝機能検査及び一部心電図の検診を実施している。
(イ)血液による健康診断
検診車で巡回検診する勤務学校は人事委員会指定の特地以上の学校に勤務する教職員を対象に実施しているが、特地を除きかつ巡回検診を実施しないへき地校に勤務する教職員を対象に実施しているのが血液による健康診断である。
実施方法は、医療機関の採血車がへき地校を巡回し直接血液を採取し、持ち帰り医療機関において血液を分析、健康状態をチェックする方法である。
(ウ)人間ドック
県人事委員会の二級地以上のへき地学校に勤務する三十五才以上の教職員を対象にへき地の勤務条件を考慮し自己負担なしで人間ドックを実施している。
前述のとおり健康管理事業としては現在、人間ドック、婦人科検診及びへき地校勤務者に対する検診と三本柱で実施しているところである。これら事業のより詳細な点は、割愛するが事業の目的とするところを理解頂き多くの教職員が受診するよう念願する。
(三) より充実した健康管理事業を目指して
昭和五十九年度において実施している健康管理事業は、前述のとおりであるが、今後の健康管理事業をより充実するための施策等は何処にあるのかを考えてみたい。
ア 健康管理事業の基盤整備
いかなる事業を実施するにしても事業の対象となる実態を的確に把握しない限り効果は生じにくいといえる。教職員の健康管理事業についていえば、教職員の健康状態の的確な把握がどうしても必要条件となる。
前述したとおり現状の認識は希薄であり、より高度で精度の高い現状分析が必要である。そして、心と身の健康状態を実態として捉え、実態を導いている要因を科学的に裏ずけることにより健康状態の現状分析を推し進め効果ある事業としたい。
次に、事業を推進する為には、教職員の理解が絶対条件となる。私共は誰一人として好んで病気になるわけではない。病気を誘発するのは、食習慣を始めとする日常生活に左右されることは臨床的に否定できない事実であり、そのことも総ての人々が認識していることである。健康に対する啓蒙は、常に叫ばれ、事実健康啓蒙に関する情報は氾濫しているのが実情である。にもかかわらず病気になる教職員は数を減らしているわけではない。福利厚生事業における健康に関する効果ある啓蒙の方法論を講ずることにより、少しでも教職員の健康保持につながればと考える。
また、健康に対する啓蒙を強化することにより事業に対する理解を深め得ればと考える。
イ 予防医療体制の充実
健康管理事業をより円滑に実施するための基盤を整備しながら具体的な事業内容としては、予防医療体制の充実強化に努めてまいりたい。
ここ数年前までは、身体的な変調により医者に通うというのが普通であった。しかし、成人病は、それでは克服出来ないことが一般に認識され予防医療の重要性が叫ばれている。早期発見、早期治療が現在の医学では成人病を防ぐ唯一の方法なのである。これは、今後数年変わることのない方法論といってよい。従って、予防医療をいかに効果的に実施していくかが健康管理事業の成否を決めるものと考えている。更には、とかく陰になりがちな精神衛生にかかる事業の充実を予防の面から捉え実施に移してまいりたいと考えている。心と身との予防体制の確立、このことが健康管理事業の求めるべき道と考える。
おわりに
価値観が多様化し先の見えにくい不確実性の時代といわれる今日でも工業化社会の終えんに伴う生活の大変革が生ずるといわれる二十一世紀であっても人は常に健康でありたいと願うことには変わりないであろう。
動物は意識するとしないにかかわらず自己の生命を守る本能を持っている。しかし、人間は、他の動物と異なり本能のみで生命を守っているのではない。より次元の高いところで生命を保持しているといってよい。それは、科学的知識でありそれに基づく計画ある生活の仕方だといえる。
本人の生活の仕方等が健康を保持する基本であり、福利厚生事業における健康管理事業は、せいぜいそれに若干の上乗せをするにすぎないのかも知れない。
でも、本人の健康に対する自覚と効果ある健康管理事業が適確に結びつけばその効果は図り知れないものがあると信じたい。