教育福島0096号(1984年(S59)11月)-016page
制度等医療制度の改善とともに老人医療費の無料化制度が大きく影響している。このため患者負担が減少すると医療需要に波及し、需要の増大をもたらしている。
オ 受療機会の増大
医療機関医療従事者の増加は受療機会を増大させ、医療サービスが受け易くなり、国民の健康維持、増進に寄与する反面、結果として、医療費の増加の一因となっている。
(三)医療費の負担と分配
中央社会保険医療協議会の調査結果等から推計した我が国の医療費の負担と分配の状況は図9のようになっている。
ア 医療費の負担
我が国の医療費の大部分は医療保険制度を通じ賄われ、その負担と財源構成の状況は制度により非常に異っていた。一人当たりの医療費では、国民健康保険は、組合管掌健康保険の一・四五倍で、これは七十才以上加入者の割合が国民健康保険では九・八一%であるのに対し組合管掌健康保険では二・七二%であることから国民健康保険の老人医療費の負担が大きか
つたことによる。しかし昭和五十八年二月から老人保健制度の創設により保険者間の老人医療費の負担の不均衡は、制度的に改善の方向にある。
一方、組合管掌健康保険ではその財源構成については、保険者負担のほとんどすべてが保険料で賄われているのに対し、国民健康保険では、半ば以上が国庫負担で占められてきた。
イ 国民医療費の分配
国民医療費の第一次的分配の状況は、総額百とした場合、病院五三、一般診療所三四、歯科診療所一一、薬局二の割合となっている。国民医療費の八七・四%を占める医科医療費について病院と一般診療所の割合をみると、昭和四十四年度にはそれぞれ五三・四%、四六・六%であったが、昭和五十六六年度に六一・三%と三八・七%
になっており、病院医療費の占める割合が年々増加している。これは、患者の病院志向が強まっていること、医療が高度化していることが大きな要因となっているものと考えられる。
また、医科医療費に占める入院と外来の割合は、昭和四十四年度には、それぞれ三八・○%、六二・○%であったが、昭和五十六年度においては四七・三%と五二・七%になっており、入院医療費の比重が高まっている。
(四)保険診療の特色
現在の我が国における保険診療は、現物給付出来高払い制度の下に国民皆保険が実施されている。これにより国民皆保険は比較的容易に必要な医療を受けることができるが、一方では次のような分野で問題が生じており、これらの解決が必要とされている。
ア 薬剤
医療費に占める薬剤費の割合は、我が国は世界的にも極めて高いとされ、政府管掌健康保険を例にとると、昭和五十六年度では薬価基準の平均一八・六%の大巾引き下げを実施しているが、薬剤比率は三四%前後と推計されている。
イ 検査
検査機器や技術の進歩、現代医学のすう勢、医事問題に対する配慮等様々な理由を背景に検査に要する費用は増大し続け、昭和五十四年度から昭和五十六年度にかけて検査に要する費用は二一%あまり増加している。その大部分は検査の回数が増加していることによるものである。このため、最近では検査の過剰という問題が生じている。
ウ 入院
我が国では患者が病院に入院する期間が極めて長く、厚生省統計情報部「病院報告」(昭和五十七年)による一般病床の平均が三九・六日となっている。各国ごとに制度が異なり一概に比較しにくい面も
図9 国民医療費