教育福島0096号(1984年(S59)11月)-025page

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には家内の影響によるものが大きく、最近のことでは長谷川町子の「サザエさん」に夢中になり、もう何冊を数えただろうか。まん画に始まりまん画に終わるのが読書と言われるが、「まだそこまでは……」を胸中にしながら今は、西岸良平の「たんぽぽさんの詩」三巻。次に出た「夕焼けの詩」十五冊を愛読しているが、両氏のこの調刺に富んだ家族物語は小説にない読後感を強く受け、来る人々にすすめている。

もうひとつ、これは読書には入らぬが、書かれた文章を読むということで楽しいことの最高のものは、毎日読んでいる子どもの書いた作文、日記、詩であることをどうしても挙げたい。それはどんなに稚拙な表現であっても子どもを知っている私にはすばらしい文学であり、必要以上に表現技法を凝らしたおとなの書いた読み物よりも読みごたえがあり、それだけに評を入れる時などこの小さな作家に大いなる敬意を表する言葉を吟味している。

こうしてみてくると、私の読書は雑読であり乱読といわれるものであり、本来の読書というものからはほど遠いものである。しかし、活字に目を向けることは苦にしないし、むしろ楽しい。どんな内容のものにも単純に共感したり共鳴してしまう傾向があり、自分なりの論評も書評も持てないところが読書人となれないところだろう。

あたりまえの仕事をあたりまえにすることさえなかなか思うままに進まぬ日常。そんな中で少しでも自分なりの仕事を余分にやろうとすると時間にも心にもゆとりがなく、現状の読書傾向を変えることは困難なことでありこれでいいと思う。戸外に多くの趣味を持つ私には、著名な作家の全集に読書三昧に耽られる日や、書店で選んだり、ゆっくりと立ち読みできる姿は望んでみてもしばらくはかなえられそうもない。

(塙町立塙小学校教諭)

 

絵になる人

御代田 公男

 

放野球が、PL管理野球に勝つ」夏の高校野球におけるマスコミの扱いである。

 

「取手工高奔放野球が、PL管理野球に勝つ」夏の高校野球におけるマスコミの扱いである。

このところ甲子園に足を運び、高校野球を観戦する機会がないが、野球に限らずスポーツを観戦する場合、ここだけは、という二つのポイントを決めて見ることにしている。

一つは、試合が始まる際の両チームの整列態度を見ることである。挨拶は瞬間のことであり、見逃さぬようにしている。抽選のいたずらもあるが、上位に勝ち進むチームほど選手達の整列態度にどこか違うところがあるようである。胸の張り、視線、足の構えなど選手の一挙一動にどことなく品があるのである。

見るポイントの二つ目は、選手各人のユニフォームの着こなしである。洗濯が行き届き、靴はよく磨かれ、帽子のかぶりかたにしても洗練されているチームほど風格があり、強いという感じがする。「ボロは着てても心は錦」という歌があるが、着こなしのよさにはユニフォームの品質とか、値段とかは関係なさそうである。

試合が接戦になるか大差となるかは、試合前の整列態度と着こなしという二つのポイントを見るだけで予想がつくというものである。

整列の姿勢、着こなし、身だしなみへの心配りは、品性につながるもので一朝一夕の鍛練ではできない。試合の大小にかかわらず、優勝するということは、そう簡単にはできないものだ。

取手二高の選手達は、幼児期より高校期までどのような家庭生活や学校生活を送ってきた集まりなのか、興味のあるところである。選手の多くが、幼児期より今日まで絵画に親しみ、音楽を愛し、ペットを飼い、友と語り合う生活を過ごしてきた集まりなのか、部長や監督が幅の広い人間教育をめざしてどう心を配り、指導してきたのか、そこのところが知りたいものである。

冒頭にあげたように、「取手二高の奔放野球が勝つ」とマスコミが取り扱ったが、一見、自由奔放に見える中に、取手二高の選手達は、自己に対する厳しい管理を行き届かせていたのではないかと思われる。

つい最近、卒業生よりクラス会に招かれた。席上、次のようなことを言わ

 

今年も国体が行われた。古都奈良は多くのスポーツマンで賑わったことであろう。今やスポーツは国民的関心事であり、老若男女を問わずスポーツ人口は増加している。スポーツは娯楽の一部であり、楽しくないスポーツはスポーツでない−スポーツ〈岩波〉織出・斉藤著一という。してみれば教育の手段としてのスポーツも、その楽しみを減ずるものであってはならないのではないか。そしてより良く楽しむために苦労を厭わぬ心を育てることも大切である。

華々しい国体のフィールドがそれを育てる場であってほしいものである。

 

 

 

 

 


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