教育福島0096号(1984年(S59)11月)-026page

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れた。「高校在学中、登下校や廊下で先生とすれ違う時に必ず、頭の先から足の先まで見つめられました。何か自分が悪いことをしたのか、変な服装をしているのかといつもビクビクしていました」と。

出席した全員が、ヘアースタイルといい、身につけているものの調和といい、絵になる女性ばかりだった。言葉には出さぬが、「皆美しく成長したな」という私の思いと、「ようやく先生の気持ちがわかってきました」という彼女達の思いが一つになり、和やかに話しもはずみ、やっと一試合終えたような気持ちになった。

(県立磐城女子高等学校教諭)

 

いま、お休み中

桜井 孝男

 

のような心境であった過去を思えば、いまはなんと楽しんでいられることか。

 

いま、私は自己の最長不倒記録を大幅に更新中である。これまで何度もアタックしながら、ことごとく失敗に終ってきたことを思うと、我ながらよくぞと感心している。長くてせいぜいが半年であり、それはつらい禅の修行僧のような心境であった過去を思えば、いまはなんと楽しんでいられることか。

「禁煙」の話なのである。そもそものきっかけとなったのは医者が「心臓に少し不整脈がみられるので、やめた方がよいのでは」といったことにある。「やめなさい」とはいわなかった。この言葉が妙にまたぞろの気持にかりたて、「少し吸わないでいてみるか」と軽い気持で一年前に始まった。考えてみれば、これまでは「ようし、絶対禁煙しよう」と向う気を強くして、タバコを箱ごとひねりつぶし、火の中へ投じ、ライターは友達へ、同じパターンのスタートである。これでは気負いが強過ぎて、なにがなんでもの必死の形相だから、くたびれてしまって、気がついてみたら、又、吸っていたということになる。これは意志が強いの弱いのの問題でないようにも思える。

だから、今回は「やめる」と周囲に宣言することもなかったし、絶対やめるといった悲槍感もなく、いつでも吸いたくなったら吸うつもりで学校にも、家にも、車の中にもタバコを置いた。気楽に「ただ今、お休み中」なのである。しかし、年末年始ごろの酒席の多い季節はなかなかの難行苦行であった。ついつい手の出ることも二度、三度とあったが、罪悪視はしないことにした。

長く、きびしかった会津の里に春が巡りきたころ、目の前の人のヤニの臭いがようやく鼻についてきた。「これは案外続くかもしれない」、そんな思いにいたったのは四年前にもろくも崩れたころと季節が同じだったからであり、その時にはない気分になれたからである。まもなく、家の座卓から灰皿が消えた。そして、かびの生えてきたタバコは「ごみ」として、くずかごに捨てた。

今までにまったく気づかなかったことであるが、紫煙のこちら側と向う側とではなんともいえぬ人生感の差異があるように思われる。大げさかもしれないが、たった一本のタバコから立ちのぼる紫煙の前と後ろとでは物の見かたや感じかたが違うのではないかと思ったりさえするのである。例えば、間のとりかた一つにしても、しぐさにしても、タバコを介在してのものと、そうでない場合とでは自から違ってくる。タバコを持たない手はどこにおいて、どう動かせばよいのか、私の場合、まだぎこちない。かっての一区切りついた時の一服感や、その後の瞬発力などはなくなったけれど、目の前にあった曇りがとれて、活動的になったり、朝の口中のさわやかさなどはいうにいえない。食事内容も違ってきた。このごろ、年齢とも関係あるかもしれないが健康面だけでなく、生活全般において「気くばり」ということを大切にするようになってきたことも変化である。

タバコの有害さは今さら論じることではないが、それにもかかわらず、喫煙からサヨナラできないのは理屈ではなく、それが人間だからとしか答えようがない。嫌煙権もいわれて久しいが喫煙者にも権利があろう。互いに気くばりしていけばよいことだと考えている。いま、私は確かにタバコを吸っていないが、禁煙者と自分でいえるほどではないし、両せい類のようなものである。「いま、お休み中」で陸に上がった結果が肥満という新たな事態を招いているが、人生も含めていかにシェイプアップしていくかが私のこれからの課題である。

(県立喜多方高等学校教諭)

 

今・昔

佐々木 俊昭

 

三春駒で知られた古い城下町三春に田村高校がある。

 

三春駒で知られた古い城下町三春に田村高校がある。

梅・桃・桜が一時に花を開かせるところということから三春と名付けられたというこの町は、今から約五百年前の戦国時代の永正元年に田村義顕公が現在の郡山市守山から本拠を三春に移して開かれ、藩政時代は秋田氏が領し三春藩五万五千石の城下町として発展してきた。

それだけに、町内各所には古いたたずまいを今に残し、しっとりとした落

 

 

 


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