教育福島0096号(1984年(S59)11月)-027page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

着きが感じられる。

また、古くから教育も盛んで、三春藩の藩校は、七代秋田情季によって天明年間に開校され、講所または明徳堂とよばれ、はじめは城門外西南方にあったが、寛政年間その南(現在の歴史民族資料館駐車場)に移った。現在の三春小学校の校門は、この時に再建された講所門である。

藩校への藩士子弟の就学は、強制しながらも各自の意向に任せ、家塾で修学することも許可していた。また、就学を強く望む平民の子弟に対してはその門戸を開放して、八歳で入学、十五歳で卒業となっていた。

文武両道は武士の理想像であり、三春藩明徳堂でも文武両科の兼修を求めていたが、一科専修も許していた。

他の藩では、「文」は漢文が主であったが、三春藩校では、歴史や算法をも教えていた。藩師は、はじめ江戸聖堂書生の杉沢と鳥居章左衛門を、文化年間には、二本松藩より村瀬主税を招いた。また、算法に名をなした佐久間庸軒は三春藩のうんだ学者で、講所で算法の教授にあたった。廃藩後は石森村(船引町)に帰り庸軒塾を開きその門弟二千人を超え、その殆んどが農民・町民であったといわれ、三春地方には多くの算額が各所に残されている。このような教育を受け継ぐ子孫が、本校が創立されるや入学、文武両道の教育を受け、本校は多くの英才を世に送り今日に致っている。

しかし、近年、生徒の学力差も大きく、文字通り多様な生徒をかかえている現状では、努力目標や努力事項が総花式であっては指導の徹底は図れない。

それで、今年度の意識調査や昨年度末の反省から、最も大切なものは何んであるかを教職員の共通理解のもとに検討し、三本の柱を次のように設定した。

一、学習の雰囲気をつくる。

二、基本的生活習慣を身につける。

三、校舎内外の美化につとめる。

次に、この柱に対し、努力目標・努力事項を重点化し、組織運営のなかで実践してきている。

例へば、「学習の雰囲気をつくる」ことについては、教務部が中心になり「授業の工夫」を重点項目として各教科ごとに工夫しようとしている。

進路指導部では、「課外の充実」を重点項目に、各教科・各学年と連絡をとり、平常課外(放課後)と特別課外(長期休業中)を企画し、三年では個別化して実施している。

図書部では、「読書の奨励」を重点に、図書館だよりの発行とか、読書会を実施したり、読書感想文を募集し、読書を奨励して学習の雰囲気をつくっている。また、「基本的生活習慣を身につける」ことについては、生徒指導部が中心になり、「時間を守る」を重点に、登校指導や遅刻調査、また、資料をつくり、HR討議を活発にしている。

次に、「校舎内外の美化につとめるについては、保健厚生部が中心になり毎日の清掃時に、全職員が生徒と一緒に清掃をし、状況を確認している。

一方、生徒は生徒会風紀・美化の合同委員会で、一、毎日の予習復習を習慣づける。二、時間を守る。三、校舎内外を美しくする。の重点努力目標を設定し、各教室に掲示して、昔の栄光を目指して頑張っている。

(県立田村高等学校教頭)

 

初心点描

櫛田 幸太郎

 

土地での新しい生活に対する期待感や抱負めいたものを持ったものであった。

 

野山に春の息吹が一段と感じられるようになったいわきの地から、幾重に連なる山々を越え南会津のこの地に赴任したときは、まだ積雪の残る白一色の冬景色であった。初めての土地であったので、不案内からくる不安と同時に、都市部の騒然とした土地でのあわただしい生活から一転して豊かな自然に恵まれた土地での新しい生活に対する期待感や抱負めいたものを持ったものであった。

更に、私にとっては五年ぶりの学校勤務であったことが、初めての赴任地であることとあいまって、公私にわたる日々の生活を新鮮なものとして心に映しさせたものであった。月日を経るにつれ、そうした感慨や印象が色あせてくるものであるが、時折初心を思い返して自戒しているこのごろである。

四月のある朝、校門前に立って登校してくる生徒たちに声をかけているとき、制帽をきちんとかぶり、いつものように変わりなくさわやかにあいさつを返す生徒の一群に、その中で一番早く家を出るのはだれかと問いかけてみた。生徒たちは互いに顔を見合わせていたが、ひとりが五時四〇分と答えた。自転車も無理な坂道で一時間余りの道のりを徒歩で駅まで下りてきて通学列車に乗るという。家は、江戸時代の会津西街道の宿場の面影を今もそのままに残しているといわれている大内宿であるとのこと。

その生徒の後ろ姿をみながら、健脚とはいえ彼の通学の苦労もさることながら、早暁、登校に備えて朝食を整える母親の労苦とわが子の成長への期待の重みがひしひしと感じられる思いがした。そして、かりそめにも授業の一こま一こまをないがしろにできないことを今更のように強く感じた。

生徒に接する一刻一刻を大切にするという、きわめてあたりまえのことを改めて感慨をこめて感じたものであった。

五月の半ばには中間考査がある。久

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。