教育福島0096号(1984年(S59)11月)-032page

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わたしの研究実践

 

習熟度に応じた効果的学習指導のあり方

 

福島県立双葉高等学校教頭

志賀 高吉

 

一、学校及び地域の特色

 

本校は大正十二年旧制中学校として創立された。普通科一学年六学級(定員二七〇名)の男女共学校で、男女の比率は七対三となっており、生徒の進路は進学希望者八○%、就職希望者二〇%である。部活動が活発で特に野球部は過去二回の甲子園出場を果たしている。

本地域は、福島県の太平洋岸のほぼ中央に位置する農村地帯であるが、近年東京電力の原子力発電所や火力発電所が建設され、日本有数の大電源基地となっている。しかし、経済的基盤はなお弱く、経済開発を地域の文化的発展に結びつけることが今後の大きな課題である。

 

二、研究主題設定の理由

 

高校進学率の向上にともない生徒の多様化がすすみ、その結果、学習についていけない生徒が年々増加の傾向にある。これらの生徒は現在学んでいる学習内容が理解できず、さまざまな心理的要因ともからみ合いながら学習意欲を喪失させ、加速度的に学力低下を来たしている。生徒を学習に食いつかせ、学習を成立させるためには「わかる授業」の実践が不可欠だが、このためには生徒の実態に応じた教材の精選や、構造化、指導法の工夫などについて研究を進める必要がある。さらに生徒に意欲的な学習を継続させるために、学習意欲を支える心理的要因を分析し、その結果を指導の際に考慮する必要がある。以上の研究課題を解決すべく研究主題が設定された。

 

三、研究実践の成果と問題点

 

(一) 習熟度別指導の留意点

1)習熟度別クラス編成にあたっては、生徒の希望を十分に尊重しながら本人の能力適性について考えさせ、教師の指導を加えた上で決定した。

2)編成されたクラスは固定せずに生徒の変化に対応し得る流動的なものとした。

3)父兄の習熟度別指導に対する正しい認識を啓蒙し、その理解と協力を求めた。

4)習熟度別学級編成によるそれぞれの指導内容は、生徒の実態を十分に把握した上で基本的な共通目標を立て、その上で各クラスの習熟に応じた指導目標を立てた。

5)教材の精選に当たっては、生徒の学習能力を考慮し、過不足のないよう十分に検討した。

6)学習の進度は生徒の理解力に合わせ消化不良を起こさせたり、逆に冗慢にならないように留意した。

 

(二)研究の成果

三年間の研究の結果については、各教科でその成果について多少意見を異にするが、全般的に見るときは以下のように集約できよう。各教科における成果については各教科ごとに後述する。

1)過去三年間で学期末の成績不振者の数は年々減少している。 (表1)

 

表1 各教科の年度別成績不振者数(30点未満)

表1 各教科の年度別成績不振者数(30点未満)

 

2)指導計画、指導法について教科内での教員の共通理解が深まり、その改善についての研修が活発となった。

3)習熟度学習が定着しつつあることから、習熟度の低い生徒の学習意欲の高まりが見られた。

4)今後の学習指導の視点が明らかになり、指導法の改善のための具体的な手がかりが得られた。

5)学習についていけない生徒に対する要因の分析とその対策について、教材の研究、指導法の改善などで進歩

 

 

 


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