教育福島0096号(1984年(S59)11月)-035page
をデータとともに再検討し、部分的改善を施す姿勢で進めていく。
(四) 生徒の実態
英語の好きな生徒は二五%程度で学習意欲の高い生徒は少なく、受動的な学習態度の生徒が多い。論理的思考を大切にする態度が弱く地道な努力を積み上げていく忍耐力にやや欠ける。しかし指示された義務的目標は全員実行していくだけの姿勢は失っていない。
(五) 研究の実践内容
1)対象学年 第一学年六クラス
2)使用教材 Unicorn English Course(文英堂)
3)実施単位・形態
「英語1)」六単位のうち四単位を習熟度別学級編成の形態で実施し、残り二単位は自然学級の形態で英文法の指導にあてた。
4)編成方法と編成替え
六月初め、諸成績、本人の希望、クラス担任の意見を検討し、さらに個別指導を加え、二クラスを合併し、応用コース、基礎コースの二クラス(ほぼ同数)に分けた。編成替えは十月中旬に一回実施した。
5)習熟の程度に応じた教材作成について
(ア)基礎資料を確保するため中学校で履修した教材を分析した。
(イ)各レッスンの到達目標の分析と設定を行った。
(ウ)履修事項の定着を図るため、中学基礎文暗記テストを一〇回実施した。
6)評価方法
(ア)診断的評価として、入学時の校内基礎学力診断テスト、英語学習に関する意識調査、レッスンごとのプレテストを実施した。
(イ)形成的評価として、発問の工夫、小テスト(各課二〜三回)基本的事項の定着を確認するためのBasic Test等を行った。
(ウ)総括的評価として、定期考査(両コース共通問題八五%、年五回)校内実カテスト(年三回)学び方を中心にした補充授業や考査後の個別指導等のアフターケア的な指導を実施した。
(エ)評定法について
成績={英語1)(考査点90%+平常点10%)+英文法(考査90%+平常点10%)}×1/2
平常点の内容は、中学基礎文暗記テスト、小テスト、Basic Testノート、学習態度等とした。
7)授業の進め方
(ア)コース別の指導方針に関して担当者間で共通理解を図った。
・基礎コース=正しく音読でき、文の構成を把えて意味を理解することができる。劣等感を抱かせないように配慮する。
・応用コース”基礎コースの方針を十分に踏まえ、言語活動の巾を一層広げ、発展的学習をさせる。概要把握の力をつける。
(イ)家庭学習と授業の関連づけを図り、自主的な学習態度を養うため、予習プリントを配布し、ノート作りの指導を実施した。
(ウ)高校での英語学習に適応できるように「入門期の指導」の時間を設定した。
(六) 実施後の変容(教育的効果など)
1)意識調査の結果から見ると、学習内容が理解できない生徒は減少し、学習意欲は大幅にではないにしても、相当高まっている。そして、習熟度別学級編成に対する生徒の反応は、次の通りである。
◇意識調査(昭和五十七年度一年生)
英語1)の授業を現在のように二クラスに合せて、応用コース、基礎コースに分けて実施していることについてどう思いますか。
〔全体〕
・満足している 四二・三%
・どちらともいえない。二六・三%
・不満である。 三一・四%
〔応用コース〕
・満足している。 一七・八%
・どちらともいえない。四五・○%
・不満である。 三七・二%
〔基礎コース〕
・満足している。 六七・五%
・どちらともいえない。 七・一%
・不満である。 二五・四%
※全体の「不満である」三一・四%の内訳=・授業の雰囲気がよくない。四三・八%・差別されているような気がする。二五・○%・少しも変りばえしない。一五・○%・むずかしすぎてわからない。三一・八%
2)定期考査の結果から見た変容
(ア)基礎コースの成績上位者が伸びる。
(イ)コースに応じた問題を部分的に出すと基礎コースの成績下位者もある程度の点数をとり、成就感を抱くと考えられる。
(ウ)応用コースの上位者は少数伸び悩む。
3)教師の側から見ると
(ア)より到達度に合った教材の提示ができ説明展開がしゃすくなる。
(イ)応用コースではより高度の言語活動ができ、知的刺激も多くなる。
(ウ)コース編成後一時期ではあるが、余分な緊張感と落ち着きの欠如が見られる。
(七) 反省と今後の課題
1)各コース内においても学力差に応じた指導の一層の工夫が必要である。
2)受験指導を考慮せざるを得ず、教材の精選のしかたが難しい。
3)基礎コースでは授業を組み立てるために、より綿密な学習プログラムの作成と学習の雰囲気作りに一層の工夫が必要である。
4)考査問題作成や観点別評価等の評価方法について工夫が必要である。
5)学習心理を理解するためもっと活発に個別面談をすべきである。