教育福島0096号(1984年(S59)11月)-039page

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5)評価の工夫

表現の喜びを味わわせるためには、絵を描くことに自信を持たせることが大事である。そのためには、完成作品の善しあしだけで評価してはいけない。大事なことは、製作の過程である。指導に段階があるように、評価にも事前、学習中、事後の評価がある。とりわけ子供の製作過程の評価(形成的評価)を大切にしなければならない。その評価を通して、目だたない部分に焦点をあて、新しい個性を発見し、伸ばしてあげるように配慮する。

6)鑑賞指導の工夫

自分の作品については、自由にお話しができるようにし、友人の作品にも関心を持つようにさせることが大事である。自分の絵の話をしたり、友人の話を聞いたりする活動を通し鑑賞の芽を育てるようにする。

以上のように、下学年の絵画指導について説かれた。

(二) 上学年の絵画指導について

子供の意欲と関心を高め、持っている能力を最大限に発揮させ、自信を持って最後までやりとげさせるため、特に留意することとして、次のように説明された。

1)主体的な見せ方

対象を良く見て描きなさい。……などといった言葉は助言といえない。よく見てかかせたいとか、子供一人一人に自分の目で見る力を育ててあげたいというのが教師の願いであると思われる。そのためには、「見る」ということは、何かということを良く考えてみる必要がある。

2)形成的場面の自己評価

学習の目的をはっきりと、しかもすべての子供にわかるように示すことが大事である。個々の子供が自分なりの考えで自分のしていることをふり返り先に進むことができるような「目安」を学習段階にそって示してあげることが自分の考えを持たせることに通じる。自分をふり返る目安が形成的場面における自己評価の観点でもある。このように、一人一人の子供に、つまづきを発見させ、自ら学ばせる視点を与えることによって、究極的に自信を持って最後までやりとげる力の育成につながることに留意して指導する。

3)技法の指導

教師は、八の力を持っている子供の作品に対して、十〜十二の力を発揮させるような演出者であることが技法の指導上大切なことであること、などについて説かれた。

 

三、実技についての研修

 

図画工作科及び美術科の講座においては、実技研修がかなりのウェイトを占めるが、それは実技教科であるがゆえに、教師は実技体験を通して、試行錯誤しながら教材研究をすることが必要であると考えるからである。すなわち実技活動は、材料や用具の取り扱いなど、実際に自分で「やってみなければわからない」という面が多く、そのため、教師自身が絵を描き、物をつくるなど実技体験を持つことによって、児童生徒の表現傾向や、つまずきを的確に把握することができるようになるし、児童生徒理解をより深めることができるからである。

そのような趣旨から本講座においても実際の授業にすぐ役立つような各領域にわたる各種の材料を用いた基本的内容の実技研修を行っている。

例えば、本年度小学校図画工作講座一次においては、水粘土の管理の仕方から扱い方、そして、教材製作といった研修を白沢菊夫氏(福島大学助教授)の指導で行った。

水粘土は管理に気くばりが必要である上に、教室がよごれやすいなどの理由で、とかく、立体表現の素材から、敬遠されがちである。しかし、水粘土は、可塑性に富み、使いやすく、幅広い表現活動にむくことは言うまでもない。また手ざわりもよく、その感触のよさは児童生徒に「なにかをつくってみたい」という創作意欲をかきたたせるに十分な魅力にとんだ素材である。

したがって水粘土は、図画工作科・美術科の基本的な教材として重要と思われるので、あえて本講座で取り上げた次第である。

このような実技研修を通すことによって、教師自身が豊かな発想をすることができ、児童生徒一人一人に適切な指導ができることになる。

 

四、おわりに

 

児童生徒が熱中し、集中できる授業であって、一人一人が異なった答えを出すことができるようにするのが図画工作科・美術科の本質に迫る授業であると思う。

今回実施された講座では、研修者が学習理論と実技の両面から、その指導法の在り方を求めて、真剣に、しかも互いに刺激しあい、研修に励む空間が生まれた。

そのような張り詰めた空気こそが、教科の本質に迫る授業の創造を可能にするのではないだろうか。

 

実習風景(小学校図画工作講座)

実習風景(小学校図画工作講座)

 

 

 


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