教育福島0096号(1984年(S59)11月)-045page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

知っておきたい教育法令

 

学校施設の利用

 

今日、職業生活や家庭生活をより豊かにしたいという人々の要求は強く、このため、自発的に自らに適した手段や方法を選択して生涯にわたり学習を継続していこうとする生涯学習、生涯教育の必要性は高まっている。生涯教育を推進するためには、学校、社会、及び家庭の教育機能の全体を統合した考え方に立つことが必要であり、学校教育と社会教育の有機的な連携は不可欠である。地域住民が学校施設を社会教育やスポーツの活動のために利用することは、教育資源の多角的、効率的な活用によって、地域住民と学校との相互理解や協力関係が促進されるとともに、住民の学習機会がそれだけ充実されることになり、今日なお重要な課題である。

このような見地から、学校施設の利用について、社会教育法は、「学校の管理機関は、学校教育上支障がないと認める限り、その管理する学校の施設を社会教育のために利用に供するように努めなければならない」(第四十四条第一項)、スポーツ振興法は、「国及び地方公共団体は、その設置する学校の教育に支障のない限り、当該学校のスポーツ施設を一般のスポーツのための利用に供するよう努めなければならない」(第十三条第一項)と規定し、社会教育やスポーツのために学校施設を積極的に活用すべきことを定めている。なお、学校教育法は、「学校教育上支障のない限り、学校の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる」(第八十五条)と規定している。

学校施設は、本来、学校教育の用に供することを目的とした行政財産(公用財産)である。一般的に、行政財産の目的外使用については、「その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる」(地方自治法第二百三十八条の四第四項)とされている。この許可は、一般人には本来なかった行政財産を適法に利用できる権利を新たに設定する行政処分であり、行政法学上は、特許あるいは設権行為と解されている。学校施設の目的外使用を許可する権限は、学校の管理機関である教育委員会に属する(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条第一号及び第二号)。しかし、実際の事務処理では、その判断を校長に委ねることが通例である。県立学校については、福島県立学校の管理運営に関する規則は、この権限を校長に補助執行(専決)させている(第四十五条第二項。なお、市町村公立小・中・養護学校管理規則準則第三十五条第二項は、「校長を経由し、教育委員会の許可を受けなければならない」としている。)利用者は、教頭等から学校施設等使用許可申請書の用紙の交付を受け、これに必要な事項を記入して提出することになろう。同規則には、学校施設の目的外使用を禁ずる場合として、1)教育上支障があると認められるとき、2)学校施設等を損傷するおそれがあると認められるとき、3)公益を害するおそれがあると認められるとき、4)もっぱら私的営利を目的とすると認められるとき、が挙げられている(第四十五条第一項)。許可は裁量行為とされ、許可に当たっては、ここに例示されているとおり、当該事業の内容を十分審査し、校舎、運動場等に余裕があるといった学校施設の形態の面ばかりでなく、児童、生徒に対する影響何如といった学校教育という本来の行政目的にも配慮して総合的に検討し、判断すべきである。また、許可には、条件を付することができ、注意事項等も利用者に徹底しておくことが望ましい。行政実例では、忠魂碑の建設、特定政党の活動等の事例で消極に解されている。

なお、スポーツ活動等のための学校開放については、福島県立高等学校施設の開放に関する規則(市町村立学校についてもほぼ同趣旨である)等が定められている。

 

はじめに述べたとおり、各種の社会教育関係団体や地域住民による社会教育やスポーツの活動に学校施設を提供することは、今後ますます必要とされるであろう。学校においては、校務分掌の上でももう一度検討しておくことも意義のあることである。

(社会教育課主事 二瓶正浩)

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。