教育福島0097号(1984年(S59)12月)-023page

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とはよく言ったもので、数学の教師として川口高校に赴任した当時は、都会とのギャップを痛切に感じていたが、地域社会や生徒の気質に触れるにつれ、自分自身、この地に引き込まれていくように感じ、やっぱり自分は福島の人間なんだと近ごろ感じています。

赴任当時、列車の中からの金山町の風景といえば、雪、雪、そしてまた雪で、大変なところへ来たものだと感じたものです。この雪が完全に溶けたのは五月になってからです。半年間、雪とかかわる生活と聞き、またびっくりしました。

川口高校では、一年と三年の授業を受け持っていますが、実際、教壇に立ってみると、授業をすることで精一杯という感じがあり、毎日、毎日、教材研究に明けくれていたような面があり、生徒一人一人の能力、内面など、とても把握できなかったように思います。これは生徒に言われたのですが、私は五分間に三種類の顔をもつというのです。どういうことか聞いてみると、最初は笑顔、次はムッとした顔、次は怒った顔だとのことです。私の短所の一つは、短気なのです。そんなイメージが定着しつつあるようです。

本校には、他校にはない独特な行事がいくつかあります。その一つに、地域性を生かした“わらび採り大会”と呼ばれるものがあります。これは、生徒会主催ということもあり、生徒も精一杯やるようです。早い生徒は、朝四時ごろから山に入ってわらびを採り始めたとのことです。農家の子が多いためか、土曜、日曜には、手伝いをする子が多いと聞き、大変感心させられました。また、新米教師の私にでも、先輩諸先生方と同様の接し方をしてくれますし、外見とは違って優しい面を持った生徒もたくさんいます。教師として第一歩を踏みだした当時、いろいろと失敗した時、それをフォローしてくれた生徒には感謝しています。

部活動は、ボート部を受け持っていますが、私はボートの経験がまったくなかったので、最初は四苦八苦していましたが、現在は生徒と共に練習することができるようになり、この時ばかりは、授業中とは違って生徒とのコミュニケーションの場であり、生徒を理解する上で大変たすかっています。

最近、生徒のテストの点数は、教師の評価点であるという話を聞き、学習指導上、いろいろと創意、工夫をしなければと反省させられる点が多々あるように思います。私が数学の教師になった理由の一つに、数学嫌いな子、また、数学ができない子をできる子に、好きな子にしてあげたいと思ったということであります。残念ながらこの七ケ月間にそうなった生徒は、あまり見受けられないようです。これからの教師生活、こんな生徒を一人でも二人でも多く育てていきたいと考えています。

(県立川口高等学校教諭)

 

肌と肌とのふれあい

古川 明美

 

んな所なのか、全く未知の所でした。急いで地図を開き、都路村を捜しました。

 

田村郡都路村立古道小学校、ここに私は勤務しています。都路村は、田村郡の最東部、阿武隈山地の中央にあり多くの山に囲まれた静かな所です。古道小学校は、村のほぼ中央部にあり、全校生百九十八名。一学年一学級という小さな学校です。私は、三年生三十四名を担任しています。会津に生まれ育ち、知っている所といえば福島ぐらいという私には、採用通知に書かれた赴任地は、行ったこともなく、どんな所なのか、全く未知の所でした。急いで地図を開き、都路村を捜しました。

辞令を手にして、郡山から車にゆられて一時間半、古道小学校に着任しました。校長先生に挨拶をしてから、この地域のことをいろいろと教えていただきました。そして、教員住宅も学校のそばにあり、何も心配することはないし、若い先生が多いのでがんばってやってほしいと励まされました。

引っ越しの荷物とともに教員住宅に着いたとき、校庭には、まだ雪が厚く残っていました。私は、木造二階建ての校舎を見て、改めて本当に教師になったのだと強く感じました。そして、それと同時に、果たして自分は教師としてやっていけるのだろうか、子供達と仲良くなれるだろうか、父兄や村の人々とうまくやっていけるだろうか、などと多くの不安で心が重くなりました。

着任式の後、教頭先生の案内で、ギシギシと音がする階段を上り、三年生の教室の前に立ち、教室の戸をガラッと開けると、そこには三十四の小さな顔が、瞳を大きくあけて行儀よく並んでいました。初めて子供達の前に立った私は、子供達の目には、おどおどしたように映ったかもしれません。私は照れて、思わず笑ってしまいました。すると、子供達も「あははは…」と大きな声で笑いました。このときから、私の教師生活はスタートしたのです。

子供達から「先生、先生」と呼ばれ感激にひたる間もなく、私の悪戦苦闘が始まりました。右を見ても左を見ても、なにをどうやればよいのか全くわかりません。それに、子供達はにぎやかで、私が声を大きく張り上げても、いっこうに静かになりません。私は、頭をかかえてしまうこともありました。

そんな私を温かく、また力強く励ましてくれたのが、十七名の先生方でした。職員室は、和気あいあいでいつも明るく、先生方からかけられた一言が

 

 

 


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