教育福島0097号(1984年(S59)12月)-033page
年間でいくつかの単元を設定し、一人一人の変容をとらえるために、単元ごとに数名の抽出児を選定し、単元を通して追跡する。
四、実践
「酸素と二酸化炭素」(五年)
(一) 指導計画の模索
この単元は大まかに分けて二つの展開が考えられる。すなわち、燃焼という現象を中核にすえて展開する過程において、物を燃やすはたらきをする物(酸素)を追究する展開と、もう一つは、火が消えた原因(二酸化炭素の存在、空気の質的変化)を追究する展開である。
児童が自ら無理なく追究していくと思われる道筋を考えてみると、一方を追究していく過程において、もう一方の追究へ進んでも、児童の考えに対処できるように指導計画を準備した。
燃えているろうそくにびんをかぶせたときの現象を見て、児童が抱く関心や疑問は「なぜ、ろうそくの火が消えてしまうのか」が圧倒的に多く、八四%であった。そこで、基本的には、火が消えるわけから導入することにした。
(二) 抽出児の選定
事前調査により、火が消えるわけを「空気がなくなるから」と考えている児童十二名の中から、上位、中位、下位の児童をそれぞれ二名ずつ抽出した。
(三) 評価計画
全単元、各時間ごとに作成した観点別分析表に照して次のように設定した。
1) 知識理解……ペーパーストまたは質問紙、ノート、自己評価
2) 観察・実験の技能……臨場行動、パフォーマンステスト、ノート
3) 科学的思考……臨場行動、ノート、質問紙、自己評価
4)自然に対する関心・態度……臨場行動、ノート、自己評価
五、成果と今後の課題
(一) 成果
1) 授業を活気づけ、追究意欲を喚起できた指導計画
火が消えるわけを追究することから導入したことにより、空気がなくなっていないことをつきとめ、空気の質的変化、新しい空気の必要性、空気の組成などへと意欲的に学習が展開し、二酸化炭素の発生や、酸素の存在をつきとめることができた。
2) ノートから思考の足跡をたぐることができた。
はじめ、火が消えるのは空気がなくなったからと考えていた抽出児の思考の変容をノートから読みとることができた。(ノート省略)どのような考えで実験し、結果をどう考え、話し合いで友達の考えにどう反応していったか、事実だけでなく、学習過程における内面的な思考や情意面についてもノートにメモする児童がふえてきている。
3) 発表力の乏しい児童を話し合いの場に参加させる手がかりをつかめた。
発表しない児童は、どのように考えているのか、指名しないとなかなかとらえられなかったが、ノートづくりに力を入れるようになってから、自分の考えや気づいたことなどを書きこんであるため、それまで見逃していたことをずいぶんとらえることができた。そして、意図的に指名して、その考えを発表させ勇気づけることができた。
4) ノートにたくさん書けるようになったことを喜び、意欲的になった。
友達の考えについて自分の反応を書くと◎をもらえること。ABCなどの評価をしてもらえること。また、教師がどんな朱筆を入れてくれるかなどが励みになって、どんどん書くようになった。ノートを添削してもらったあと目を輝やかせて読んでいる姿が見られるようになった。
5) 形成的評価に役立った
ぺーパーチストでは把握しきれない知識理解面でのつまずき、そして、思考や、関心・態度面で、臨場評価とノートチェックをもとにして次への指導に生かすことができた。
(二) 今後の課題
ノート指導と自己評価を中心として児童の活動を促し、内面的思考を表出させるようにして実践してきた。その結果、児童は確かに伸びてきており、理科学習のし方を徐々に身につけてきている。今後は、児童主導の学習をめざし、一人一人の問題意識に対処しうるような複線型の理科学習指導に力を入れていきたい。
資料2 立ち止まりカード