教育福島0097号(1984年(S59)12月)-036page

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教育センターから

 

身近な素材を生かした中学校理科指導の研究紹介

 

一、はじめに

 

従来の学習指導要領(理科)においては、探究の過程を重視し、自然を探究する能力及び態度の育成や基本的科学概念の形成が主なる目標であった。

しかるに、この基本的な科学概念を習得させるにあたって、論理やモデルが先行しがちになり、ややもすると抽象的な科学概念に深入りしすぎる傾向がみられた。また、具体的に身近な素材があまり取り扱われなかったため、生徒に十分理解されず、理科ぎらいの生徒を増加させる結果になったのではないかという反省がなされた。

現行の学習指導要領(理科)では、その反省の上にたって、基本的理念は継承しながら、特に「自然の事物・現象に直接触れる学習を重視し、自然を調べる能力の育成及び基本的科学概念の形成が段階的に無理なく行われるように配慮する」ことが強調されている。

これらのことからわかるように、理科学習においては、自然の事物・現象に直接触れ、これに積極的にはたらきかけ、そこから問題を見い出し、自らの力で問題を解決するように配慮しなければならない。それによって、自然を調べる能力や態度が育ち、また、経験の段階的な積み上げが可能になり、科学概念が漸進的に形成されるようになると考えられる。

しかしながら、中学校理科においては、時間的制約もあって、身近な素材を積極的に取り上げ、自然の事物・現象に直接触れさせる機会が少ないように思われる。これらの実態をふまえ、少しでも問題点の解決をはかるために、この研究をとり上げた。

 

二、問題点と研究の方向

 

最近では、土地開発や都市化などによる自然環境の変化や各種メディアの普及による情報の氾濫などから、日常生活の中で自然に触れあう機会が少なくなってきたり、生徒の生活、遊びが変わってきている。

そのため理科指導上の問題点としては、次のようなことがあげられている。

 

(一) 論理やモデルが先行しがちで、身近な素材に触れさせる機会が少ない。

(二) 適当な場所や実施する時間がまとまってとれないために、野外学習はあまり実施されない。

(三) 生活経験からかけはなれた資料、VTR、スライドなどを使用するため、生徒からの疑問や質問がでにくく、主体的な学習が展開しにくい。

 

このような現状から、自然の事物・現象に興味を持たせて直接経験を重視するために、「身近な素材から学ばせる」手だてを講ずることが特に必要とされる。

以上のことから、当教育センターにおいても、学校現場の協力を得て、中学校における「身近な素材を生かした中学校理科指導」はどうあればよいかについて、授業実践を通して研究することにした。

 

三、「身近な素材を生かす」とはなにか

 

(一) 次のような基本的考え方にたって研究を推進していく。

1) 日常身のまわりにあるもののなかから、学習の対象として考えられる適切な素材を選んで教材化をはかり、観察や実験器具の創意工夫をしたりして、指導

 

スプレーの空かんを利用して空気の重さをはかる生徒たち

スプレーの空かんを利用して空気の重さをはかる生徒たち

 

 

 


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