教育福島0098号(1985年(S60)01月)-012page

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過程の設定

イ)地形図の読図指導(資料1)

学習指導要領においては、地図を読む、描く、まとめる、発表することを重視している。それは、地理的事象の追究をはかる学習においても「地図による学習」だけでなく、「観察する学習」を重視するということであり、それが生徒達の「地図を活かして用いる力」を育てるうえで重要なはたらきをするからである。

そこで、読図能力を高める指導を次の五つの観点から考えてみた。

ロ)読図能力を高める指導の手だて

(a)形態による考察

地理的事象を色彩や形態(大小、広狭、高低、深浅)から読図する。地域の特色を地図との事実に即して形態を読みとる習慣をつける。

(b)比較による考察

山、川、海岸、都市、鉄道などの個々の分布の把握から、事実や事実相互の比較が行われるようにする。

(c)相互関係による考察

「川に沿って平野がある」という事実を読図した場合、なぜ平野ができたのか、川と平野との関連を追究し、関係的に見るようにする。

(d)場所的考察

「南九州に鉄道が少ない」と把握した時、北四国、瀬戸内との比較において南四国を考察するというように、他との比較において場所の特色を考えるようにする。

(e)地域性の考察

「瀬戸内海に鉄道が通っていて、太平洋の方はあまり通っていない」という地域性の把握にあたり、他地域との関連において見るようにする。 (身近な地域「郡山」の読図の実践例資料1)

ハ)地形図の作図指導

(地形図の作図指導案省略)

基本的事項として次の点に留意して指導した。

 

1)方法 事物、事象の位置を地図上で正確に表わす。

2)距離 長短が作図上でも長短として表現できる。

3)面積 直線的表示でなく広がりが考慮され表現される。また広がりの広狭が区別されて表される。

4)事物、事象を具体的に表現するのではなく、記号化する。

5)地形の変化がわかるように土地の高低の表現の仕方を工夫する。

 

(a)観察学習と作図

地域の観察学習では、事物の関係位置やそれぞれの方法、地形的な特色、集落や道路の分布の状態、それらを含む場所的相違などが把握される。このことは作図においても、何をどのような手順で、どのように表現すればよいかということを明らかにしてくれる。

(b)空間的な広がりの指導−距離感を育てる

 

1)上の方を北にして方位を決める。2)主な鉄道道路の記入。3)商店街や住宅の分布の記入。4)公共施設・主な建物の位置づけ、5)土地利用の分布。6)土地の高低の表現のくふう。

 

(c)縮尺−大通りは太く、裏通りは細く、大小遠近の表現をさせる。

(d)記号化−直接経験できない事象を抽象化し、記号をみれば、事物・事象がイメージとして浮かんでくるようにする。

(e)等高線−日本の地形の特色を地図から読みとるには、等高線は不可欠である。それは、山地と川、川と平野、山地と鉄道や集落の分布、自然条件と生産活動など、自然と人間性活とのかかわりの中で、地形の占める比重がきわめて大きいからである。

このように野外観察や調査を通して地理的な見方や考え方を育成し、読図や作図能力を高めたり、読図や作図を通して地理的な見方や考え方を育成していくという理論と実践面を考察してきた。こうした基礎的、基本的事項をふまえながら、略地図中心のノート作りを工夫し、それが生きてはたらくような方法で、年間を通して実践化を試みた。

ニ)略地図中心のノート作りの実践

◎予習的な読図、作図として

(a)毎時間、描図例にならって略地図をノートの中央に描いてくる。

6)学習課題について、教科書、地図帳、参考書等からと図書室などを利用して調べてくる。

◎本時の流れとして、

(a)教科書、地図帳や文書資料を中心にして精読し、教師自作のTPを参考にして地理的事象を略地図ノートに書き込む。その際、書き込む事象については、グループ間で話し合い、あいまいな点は教師の助言を受ける。

(b)作業学習を通して課題の追究をして解決を図っていく。個別に調べたことをグループで話し合い、一斉授業の中で確認し合う。その中で、加除修正や着色を行い、理解を正確にしていく。

◎学習の整理・発展として

(a)本時の学習について「自己評価記録表」に記入し感想をかく。一資料2一

(b)次時の学習課題についてグループで話し合い、教師の助言をもとに共通課題を設定する。

−略地図中心のノート作りの一例−

(資料3の1)

ホ)ノート作りで指導上配慮した点

(a)学力が下位の生徒も積極的に活動できるようなグループ構成のもとに協力学習を進めた。

(b)ノート作りには個人差が大きいの

 

資料2 自己評価記録表・感想

−中国、四国地方の一例−

 

 

 

 


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