教育福島0098号(1985年(S60)01月)-015page
作図は当該学年にふさわしいものを精選して、その正答率をみる。
ウ、把持テストの問題は、その内容の順序を事後テストと変えてみる。
エ、仮説の有効性は、テスト問題による正答率だけでなく、生徒のノートを分析し、出来ばえや内容についても参考にして考察する。
オ、有効度指数七十パーセント以上を有効と認め、変容があったと認めることにする。
−−事前・事後テストの結果−−
−−事後・把持テストの結果−−
2)、授業の考察
ア、野外観察と調査を基盤においてこれまでの読図、作図作業の成果をもとに授業を進めたので、地図への関心が高まり、活発な表現活動が展開された。
イ、グループ学習を中心に協力学習の訓練を定着させたので、生き生きとした、しかも創意工夫のあるノートづくりがみられた。
ウ、地図は継続的な反復練習により正確に描いたり、読むことができることがわかった。
オ、イメージ認識の学習として地図を見ることの楽しさを味わわせることができた。
カ、自然や社会の背後にある人々の営みや生産、消費活動とその意味が把握できた。
キ、地図の約束の基本的事項が正確に理解できた。
ク、「促成栽培の問題点」などをあげさせる問題文などには抵抗が強く出来が悪かった。
3)、結果の考察(資料4)
ア、問[1]の(1)は「高知県の野菜栽培の移り変わり」を図表から読みとることであるが、作物と年度の組み合わせが正確に読図できない生徒が数名おり、指導を要する。(2)の「農畜産額に占める野菜の割合」は円グラフで見やすく、(3)の「施設栽培でとれる野菜の割合」は全国と高知との比較であるが、どちらも正答率がたかかった。これは日常の学習訓練の成果だとおもう。問[2]の「高知県で促成栽培のさかんな理由」が予想以上に事後、把持テストにおいて高かったのは、九州地方の宮崎県で既習した野菜の促成栽培が継続的に理解を高めてきたようだ。しかし問[3]の「促成栽培の問題点は何か」については事後テスト四十三パーセント、有効度指数二十三パーセントと低い。これは、ハウス栽培や交通問題とからんで問題点が多岐にわたっており、特に学力の中、下位の生徒には的をしぼりきれない面があったと思う。これは指導者の大きな反省でもある。
(3)、結論
1)、事前・事後テストの結果の有効度指数や生徒のノート、あるいはトレーシングペーパーなどの内容から、ある程度の変容が見られ、仮説は有効にはたらいたと思われるので、今後さらに指導を継続していく必要を感じた。しかし、個々についてはいくつかの問題が残っているので解決しなければならない。
2)、読図・作図指導において、教材内容の精選、重点化を図っていったので時間的に無理がなく指導しやすかった。
3)、教師の一方的な説明による指導でなく、作業を通しての学習を組織することによって、意欲的、積極的に取り組めるようになった。
4)、一部の生徒には、まだ地図学習に抵抗を示している者もいるので、今後さらに工夫の余地がある。
(4)、反省と問題点
1)、学習指導要領(分野目標5)の地図を読み、かつ作成するというねらいを具体化し、授業を進めるにあたり、小学校から中学校までの読図・作図に関する学年系統を分析し、小・中学校における地図指導の一貫性を図ってきた。そして、その指導の中核を生きて働くような略地図中心のノート作りにおいたが、それがはたして生徒の発達段階に応じたものになったかどうか、今後さらに実践研究を積み重ねていきたい。
2)、地理的分野においては、生徒達が何よりも"地図が好きになる"ことが大切である。生徒たちが、地図を見て多くのことを読み取れれば、読みとれる程、授業は活気をおび、生徒がのってくることが、この研究を通して実践した。
3)、「なすことによって本質を掴む」と言われる。生徒の手と頭を使った作業学習の成果には、その生徒の考え方や態度、技能が見事に表現されている。
4)、生徒のノートやトレーシングペーパーの感想の中に、地理が好きになり地図帳をよく見るようになった。地図を通して物を見たり考えたりする習慣が身についた、といった表現をいくつも見い出し心強く思っている。
資料4 事前テスト、事後テストの結果 −南四国−