教育福島0098号(1985年(S60)01月)-019page
立するものと考えた。そこで大事になってくるのが一人一人がどれだけの既習事項を身に着けているかである。そのことを調べる為、次のような実態調査を行った。(資料2)(調査内容は省略)
○ 一年から四年までの植物教材の中で、条件や環境に関する問題についての調査
○ 五年 観点別到達度学力検査実施(教研式)
この結果を利用し、一位を上位の子、二十一位を中位の子、最下位の四十二位の子として抽出し、パンフレットそのままを資料として載せた。
○ 雷神山の知識調査
○ 植物の成長についての調査
これは、成長について、今までの学習のどういう内容をこの単元に生かしていこうと考えているのかを見る調査
以上の調査により、個人の知識能力全体の知識の落ち込みが明確になり、この単元に必要欠くべからざる学習内容についての補充を行い、既習事項の堀り起こしをした。
4)自然の変化を鋭く見つめる目を育てる為の指導(資料3)
○ 一回山に入るごとに変化の様子で気づいたことをメモさせ、意識して、自然の変化を見つけさせていったことは効果的だった。
○ 一回ごとの感想を提出させ、鋭く見つめる目をもってきた変容を、教師がすぐ気づいてやり賞賛を与えたことにより、また新たな鋭く見つめる意識をもたせることにつながっていった。
○ 感想も書けないような低次の子は、この自然の変化を鋭く見つめる目が育っていない為に書けないでいるので、山へ入った際、一緒に行ってどんな気づきをしているのかを引き出させ、自分の気づき(発見の意味)に気がっかせてあげるよう助言指導していった。ちょっとした助言が意欲へつながったり、課題解決への糸口になることが多く、教師の手助けの必要性、重要性を感じた。
○ 自然の変化を鋭く見つめる目を育てるには、自然の変化が大きい季節を選ぶことも手立ての一つである。その意味で、植物の成長が大きい若葉のころを選んだことはよかったようだ。
○ 教師はひそかに冬の様子を写真で収めておき、若葉のころと比較させる為の資料を作っておくことも必要である。季節の変化による驚きは、だれの目から見ても大きなものとしてとらえることができた。
○ 他の子には気づかなかった気づきのもてた子には、大いに賞賛を与えてやったため、自分だけしか気づかないことを見つけようという意識をいだかせた。
5)自然から直接学ぶことによる感受性の育成
この単元では、植物の総合学習ということなので、植物の生存競争にまで目を向け、生命尊重といった態度を養える機会でもある。
実際、この単元のまとめの授業を行った時、子どもたちはC地区の赤松の育てない様子やB地区・E地区の枯死した木の様子は、競争に負けたものであることを知り、自然界のしくみを恐ろしいもの、厳しいものと嘆き、植物に哀れみさえもつようになった。そのときの感想を"雷神山を学習して"(資料子どものパンフレットの中から)と題して、単元のまとめを感受性豊かに表現している子どもがたくさんいた。
また、はじめから植物に生命を感じたり、人間と比較しながら観察していった子どももいた。 (資料略)
以上のような感受性豊かな子どもを大いに賞賛し、できる限りみんなの前で取り上げ、感情表現を多く取り入れた自分の(自分にしか作れない意味)パンフレットづくりに心がけるよう指導していった。
6)多様な考えを生かしながら、統一的な見方のできる目を育てる為の指導
○ 指導計画上で、個人追究学習を重視しながらも、一斉学習の二本立てという形をとったのも多様生の中の統一性を推し量っていった為である。
○ 個人追究学習において、自然条件は、単一条件ではなく、複雑な因果関係による様々な条件があることを学んでいった。しかし、個人の追究だけでは不確かである為、話し合いによって統一的条件があることに気づける場を与えていった。さらに、話し合いの練り上げにより、植物同志が相互に影響し合って成長していることもとらえていった。
7)下位の子どもの目標達成のための指導
個人研究でなんといっても心配されるのは、下位の子どもが課題を未解決のまま終わってしまいはしないかということであった。
下位の子は、感想すら書くことがないと投げ出したい気持ちで、意欲が感じられない。また、指導から離れるとすぐ遊んでしまう。
そこで指導に当たっては、感想だけは絶対書かせるという強い意志をもつ
初夏の雷神山E地区(うっそうと繁る落葉樹)