教育福島0098号(1985年(S60)01月)-022page

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宝物でも取り扱うように、たがねで周囲を少しずつ堀ってゆく。岩石に突き当たると、ハンマーで叩く。何回か同じことを繰り返す。普通、五分間もじっと学習できない子どもなのにと感心しながら注目していた。何分か後に、「先生、すごいでしょう」と、両手を差し出してきた。大きな貝の化石がのっていた。「すごいなあ。先生も初めて見たよ」と、言葉をかけると、ちょっぴり得意な表情になり、友達の方へ走り去った。

「化石」と聞くと、不思議なことに私は二十年以上も前の高校時代を思い出す。地学の学習内容は、ほとんど記憶にない。しかし、なぜか、三葉虫やアンモナイトの化石とY先生の熱心さが浮かんでくる。

「三葉虫の化石は……」と、話す時の先生は情熱の固まりになる。「この小さな化石の発見が、今までの定説を引っ繰り返すこともあるんだ。化石は、地球の遺産なんだ」と、眼鏡を上げて話す時は、声が一段と高くなる。こんな話を何回か聞くうちに、先生の夢が生徒の夢になっていく。「化石を発見してみたい」という意欲が高まり、海岸の崖や切り通しなどをよく調査した。苦労して発見した化石は格別な思いがして、心ときめいたものである。今日の子どもが化石を見つけた様子から、同じ気持ちであったと思われる。

また、この地学で思い出されるものに「イグザンプル」がある。毎時間、終了五分前に出す練習問題のことだ。簡単に言えば「手づくりの豆テスト」である。答えをノートに書き、持参すると、正解の場合は赤ペンで五重丸を付けていただける。高校生の私にも、先生の手づくり問題が板書されると、意欲がわいたものだった。

こんな事を思い出した私は、今回の野外観察に参加して、忘れかけていたことを再確認した。自然の中に、子どもの探究心をゆり動かす素材がたくさん存在すること。直接ふれた体験的な学習は、子どもの興味・関心を高め、感動する心を育てていくことである。

幸いなことに、私は、山間僻地の小学校へ転勤し、自然に接する機会も多くなった。学校の裏山は、絶好のクリやキノコ採りの場になる。都会の子どもたちより環境に恵まれている点もある。この中で、一人一人の子どもの心を動かす教育を実践したい。

そのためには、1)教師自り熱意ある授業をする。2)教師が自らに厳しく、教材研究に取り組む。3)教師自身が工夫した手づくり教育をする。の三点が大切になるだろう。子どもたちが楽しみに待っている授業、生き生きと活動する授業が願いである。自然を最大限に生かせる地域の特色を教育に活用し、一人一人をより良い方向に変容できたらと思う今日この頃である。

(只見町立明和小学校教諭)

 

汗を流そう

古田尊夫

 

できるものに部活動がある。その指導を通してさまざまな生徒に接してきた。

 

現在の学校での教育諸活動の中で喜びを見い出すとともに、自分の存在価値を確保しながら成功感や成就感を味わうことのできるものに部活動がある。その指導を通してさまざまな生徒に接してきた。

「先生、もう一本、もう一本」と他の者が終わっても催足しながら練習に励む生徒がいて、ついついバットを持って時間を過ぎてまで相手をしてしまったことがある。この生徒はレギュラーやチームの中心的な者ではなく、十五人のメンバーにもなかなか入れない状態であった。忘れものが多く、家庭での学習もあまりやらないで、時々担任との個別相談に職員室へ顔をみせており、部活動の練習などもほどほどにして過ごすような時が多かった生徒であったが、このような変化をみせ始めたのは、ある練習試合でいつもの選手が、けがで出場できなく、補欠選手として出場してからである。失敗しながらも夢中でボールを追いかけ、走った時、チームメートがかけてくれた「よかったぞ、ナイスファイト」のかけ声がきっかけとなったようである。それ以後は練習の約束のもとに積極的になり、部活動ばかりでなく学習や生活にも意欲的になったようである。仲間に認められることがその生徒にとっていかにすばらしい励みとなり、やる気を起こすようになったかしれないのである。

このようなことは普通どの学校にもあることで、経験している生徒も数多くいることであろう。このように部活動を通し、生徒が自分の存在価値を確認し、その彼の行動がプラスの方向に変容していった時、指導者としての喜びを感ずると同時に、生徒が生き生きと活動する契機となるものをいかに見い出してやるかの重要性を痛感するものである。

好きなことは、それによって苦しくても楽しく、嫌いなことはごく簡単で何の苦労を要しないことでも避けたくなるものである。これは多くの人が自然にもつ感情であり、どうしても自分の好きなことをしたり接したりする機会は多く、嫌いなことは何かにことよせて接する機会をはぐらかそうとしてしまうものである。とかく楽をし、苦労をしないで晴舞台へ、と考える生徒の多くなる現状では、スポーツを通した部活動は強い精神力と根性の養成には最適な場であり、よい機会でもある。さらに、望ましい人間関係の醸成とし

 

 

 


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