教育福島0100号(1985年(S60)04月)-020page

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特に家庭には、家族の精神安定と明日への活動力の源泉となる機能が強められる必要がある。

また、地域や社会における婦人の活動への期待が高まる中で社会の形成者としての婦人の自覚を促す必要も考えられる。

このような家庭、社会をめぐる問題点や期待をふまえ、次のような婦人の学習課題があげられる。

(ア) 自己の主体生を高め、家庭や社会における個人の役割を認識し、真の男女平等の実現のため、人権意識にめざめた市民としての自覚を促す必要がある。

(イ) 時代の変化や進展に対応できるよう、現代的知識を身につけるとともに、情報を的確に選択し活用することを学ぶこと。

また、心豊かな生きがいある人生を送るため、生活設計に関する理解や実践の態度を養う必要がある。

(ウ) 家庭は社会の基礎単位であり、家族が共同して作りあげる家庭のあり方や、子どもの自立性、社会性をはぐくむ家庭教育のあり方を学ぶ必要がある。

(エ) 婦人労働の実態を知るとともに、職業に関する知識・技術の習得や職業選択能力の向上を図り、職業人としての資質を高めること。

また、職業生活と家庭生活の調和を図り、働く婦人としての健康管理について、知識や技術を習得する必要がある。

(オ) 地域の連帯意識が薄れている今日、個人的自覚に基づいた連帯意識の形成者として、温かい人間関係をはぐくみ、活力ある地域社会づくりをすすめること。

そのため、団体・グループ活動やボランティア活動などを促進し、婦人の積極的な社会活動への参加を拡大する必要がある。

 

5) 高齢期

 

平均寿命の著しい伸長による高齢者の自由時間(余暇)の増大や老人福祉制度の充実等による経済的余裕等が考えられる。反面核家族化に伴う老人夫婦世帯、独居老人世帯の増加、さらには、高齢期に入ってもなお働きたい、働かなければならないという立場の者が増加してきている。

こうした中で文化的学習要求への対処、核家族に伴うさまざまな生活課題に対応する教育的施策が強く求められている。

また、高齢者自らが社会に対応した高齢期にふさわしい社会的能力を身につけ、豊かで積極的な生きがいを自分のものとしていくことも必要である。

(ア) 高齢者の生きがいをふまえて趣味、教養に関して、身近な場所で学習の機会が得られるよう工夫し、グループ・サークル活動の活発化を図る必要がある。

(イ) 健康管理を自らの課題としてとらえ、健康の維持、病気の予防について学習するとともに、高齢者にふさわしいスポーツ活動の奨励に努める必要がある。

(ウ) 世代間交流、地域文化の伝承、知識・技術の伝授等高齢者の能力を社会に生かす社会参加の方策を図る必要がある。

(エ) 定年後の再就職、現役として働く人たちのために、職業に関する知識・技術・安全等に関する学習機会を設ける必要がある。

 

五、おわりに

 

本県における生涯教育を推進するにあたっての基本的なあり方や考え方について述べてきたが、これから解決しなければならない課題も多い。

 

第一は、県民の動向を的確に把握することである。

県民が今、何を考え、何を望んでいるのかをしっかり把握することである。

第二は、生涯教育の観点に立って行政施策を見直すとともに、新しい事業を行うことである。

第三は、生涯の各時期に見合う学習機会の整備と学習プログラムの開発である。

乳幼児から高齢者にいたるまで、それぞれの各時期における発達課題に即した学習が行われるようにしなければならない。

また、それらの各時期をこえた社会参加活動や世代間交流活動等も積極的に進められなければならない。

第四は、学習のための条件整備である。

県民のニーズにあった学習活動を促進するため、施設や教材・教具及び指導者等の一層の充実が図られるようにしなければならない。

第五は、生涯教育関係機関・団体の連携・協力である。

学校教育と社会教育の連携はもちろんのこと、教育行政機関以外の機関とも、生涯教育の観点に立って連携・協力を促進することは、生涯教育の体制の確立のためにもつとも急がなければならない。

そのため、日常的な情報交換や定期的な協議を意図的に進めるとともに、生涯教育の必要性について、事業の共催や後援等を進めながら、関係者の理解を深めることは不可決である。

 

これらの課題の解決は、一朝一夕にできるものではない。

すぐにできるものから実施し、その積みあげを図りながら、本県の生涯教育を構築することが肝要である。

 

 

 


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