教育福島0100号(1985年(S60)04月)-026page
から。」
三月はじめの文である。無感動の子が多いと言われているが、そうではない。教室から見える林の色の変化にも、昨日の夕焼けの美しさにも、白一色になったグランドにも感動している。
「先生はいったいどんな生活をしているの?学校でつとめて、家に帰ってもテストをみて、読書もして、編み物もして、家の仕事もしなければならない。二十四時間をどう使っているのか知りたいな。スーパーレディだな」
テストをして、翌日答案を返した日の文である。
「先生のお父さんの病気早く治ってほしい。きのう早帰りしたのは、お父さんが悪かったから?帰るとき目が赤かったみたいだった。私の父はまだ若くて元気だけれど、悲しい気持ち少しはわかります」
生徒たちに心配してもらった父も、一月四日に亡くなった。三学期のはじめの日、女生徒たちは泣いてくれた。いつも私の表情をみつめている。そして素直な気持ちで問いかけてくる。
「タベと今朝の食事をしていません。母とけんかしたからです。部屋の入口にバリケードして、一人で考えました。まだ仲なおりしていません。ごめんなさいという気になれません。いつも母は自分の考えだけを押しつけてくる。」
やり場のない気持ちをぶっつけて書く。書くだけで気持ちがやわらぐことも多いらしい。
このノートを通して、どれほど生徒たちの生活に触れたことだろう。私ばかりでなく、生徒どうしで考えを述べ合うことも起こってくる。たまに、親子で随分前のぺージをめくることもあるようだ。
班ノートは、教職について以来、一貫して取り上げ、実行してきたことである。毎日提出される六冊のノートによる六人との対話で、私も励まされ、慰められる。新年度になって、また新しい六冊のノートがそろった。
(会津若松市立一箕中学校教諭)
農業教育の一こま
大谷勝英
新緑の四月を迎えると、新入生の「農業基礎」の体験学習が始まります。この科目の特色は農業の基礎的、基本的事柄を実験・実習を主軸として学習させて、農業についての興味と関心をもたせ、併せて専門科目を学習する基礎の確立をはかることがねらいなのです。実際に作物栽培と動物の飼育ができ、農業生物を育てる喜びを喚起させ、生育観察、生命体を育てることの出来る実践活動をとおして生徒の探究心を起させなければなりません。こうした意味では農業基礎学習で栽培する作物は地域の代表的な作物で、しかも基礎的な知識、技術の要素を多く備えているもの、各発育段階で変化に富んでいる教材の選定が重要となってきます。
入学してくる生徒たちは農家出身であっても農業の体験がほとんどありません。種子のは種の仕方や苗の観察、管理の仕方、ほ場に植え付け、鍬の使い方、どれもこれもみな始めての実習です。
興味関心をもたせるための作目選定にいろいろと検討し、観察、生育調査等比較的しゃすい「スイカ」をとりいれてみることにしました。実際に指導してみると、生徒にとってスイカを栽培するのは始めてであり、なかには此の地方では栽培出来ないものと思っている生徒もいるようでした。ほ場に定植し夏の暑い日の管理や除草、生育調査など、なかなか興味関心が高まらず時が過ぎましたが、これも農業に対する体験が少ないためと思われます。しかし、スイカに実がつき一週間ごとに