教育福島0100号(1985年(S60)04月)-039page
県立図書館
児童室あれこれ
県立図書館副主任司書
馬場 ヒロ子
図書館コーナー
子は若芽、本は太陽
(60年度子どもの読書週間標語)
昨年七月暑い夏、新築オープンして早や九カ月たち、ようやく落ち着きを取りもどした県立図書館児童室で思いついたことを述べてみたい。
第一は、「器」について
夏休み開館のせいもあってか、今振り返って考えてみると、全館冷房のはずの図書館であったが児童室だけは別格であった。朝のラッシュアワーよりも、デパートのバーゲンセールよりもひどい混雑ぶり、これは、一体なんであったのであろう。信夫山を背景に日本庭園を配した広大な面積にそびえ立つ立派な建物のせいだったのだろうかと。大勢入館した中のかなりの人たちは、「器」の美しさに興味と好奇心を抱いてやってきたのかも知れない。しかし「器」が美しければまず「器」の中味を人は知ろうとするのではないだろうか、これは、しめたと思う。それは本について興味をいだいてもらう一歩だからである。今まで図書館を利用したことのない子どもたちが、親と連れだってこの「器」の美しさにひかれて来館してくる。「器」の中に入り、本という中味に子どもたちは、きっと興味を示しそのおいしさを感じたことであろう。このように、興味をひくような「器」がまずは大切であることを痛切に感じた。そしてこのような「器」が県内各地に沢山建ってほしいものと思う。
第二は、マナーについて
誰れでもが使える公共施設だからこそ後始末も大切である。特に利用の多い日曜日などは書架にきちんと納まっていた本を、食べちらかしたように、そのままで帰ってしまう子どもたちが多く見られる。家であったら家族のだれかに「かたずけなさい」と言われるはずであるが…。一体他の公共施設を利用している場合は、どうなのか?このことから子どもたちと一緒に来る親は勿論、周囲の大人たちも公共施設の利用について改めて考えてほしいと思う。
第三は、図書館の利用の仕方について
市町村立図書館が徐々に整備されてきており、図書館がより身近に利用できる機会が多くなったわけである。県内の公共図書館実態調査によると、市町村立図書館における全蔵書数に対する児童図書数の割合は、約三〇%となっているので、学校教育の中でも尚一層図書館の利用の仕方についての学習を深めてほしいと思う。
御承知のことと思いますが、市町村立図書館では、図書の貸出を中心に、それと読書相談等も行っていますので、学校図書室の利用と併せて図書館活用促進のためにさらに関係者の緊密な連携が必要と思われる。また、県立図書館では、世界主要国の絵本などを含め子どもの本を網羅的に収書しているほか、父兄や研究者のために子どもの読書に関する参考文献を幅広く収書し、その利用に供することをしている。
なお、児童図書研究室という新しい分野が設置され、児童図書に関しての調査相談コーナーが設けられたので大いに利用されるようおすすめする。
この機会に次の二点の図書を推選したい。
絵本 弟への読み聞かせ
すずきあや・ぶん・え
ほるぷ出版 七八〇円
六年生のあやちゃんが、二歳になる弟とも君への絵本の読み聞かせの記録をとりあげた絵本。姉と弟との温い交流が伝わってくる。
安全地帯
菊池 鮮理論社 一二〇〇円
現代中学生たちの生き方、考え方の核心に迫る小説。中学生と共に悩み、考え、探求した優しい心の温みがこもる体験記である。