教育福島0100号(1985年(S60)04月)-041page
進んでいる時「横のつながり」とする。(資料2)
(二) 検証授業概略(本時についてのみ)
1、題材…一年「川と人間」(十月に移行して実施。本時は第三時)
2、ねらい…第二章を読み、段落の要点を確かに把握しながら、堤防と流量の関係についての筆者の考えをつかむ。
3、指導過程(略)
4、授業の考察
(1)範例学習として、まとめる働きをする語句、「縦と横の関係」の展開の仕方を例文によって行ったところ、類似の文章では、正しく把握する生徒が多くなった。
(2)「診断カード」の利用については、利点が多かった。
(3) 前時から本時までの間に学習意識が形成されていて、取り組み易い。
(4) 生徒のつまづきをとらえられ、指導の方法、展開の仕方を予想できる。
(5) 教師の「診断」と「評」には興味を示し、学習のポイントなどの朱書きに喜びを持って臨む生徒が多い。
(三) 結果の考察
事前テスト・事後テストの比較から、要点を見つける力は相当向上していることが分かった。また、「縦と横」の図式化も、ほぼできるようになり、中心語句の把握、文相互の関連、中心文の発見など総合的な力が伸びた。
さらに、抽出した上・中・下位生徒の「診断カード」に記入された要点を見ると、いずれも中心文を見つけられるようになっている。個別的治療としての学習ヒントや教師の評は、生徒の期待感と成就感を盛り上げるために効果が大きいことが確認できた。
資料2「縦と横の関係」図式例
三、研究結果を利用した表現指導
段落の要点を正しく把握する力、ことに中心文を見つける力を利用して、文章を豊かに書かせる試みをするために、表現3「心に残っていること」(十二月下旬実施)において理解と表現の関連を図った作文指導を行ってみた。
(一) 授業計画
1、指導計画(配当時数四時間)
(1)心に残っていることの発表、題材の決定……一時間
(2)中心文の設定と構想……一時間
(3)文章記述と作品の発表…二時間
2、ねらい…(ア)様子や場面・経過がよくわかるように表現できる。
(イ)短い作文で、中心文をもとにして構想を広げて豊かに書くことができる。
3、本時(第二時)の意図と工夫
分かり易くて豊かな文章を書かせるために、まず中心文を設定し、広げるための構想を作らせる。その際に、定めた中心文と他の文との関係を明確にしていくよう、既習の「縦と横の関係」を取り入れる。そのための留意点として次のことを指導した。
(1) 題材選定の時間を省いた。今回は、それに要する時間を構想の充実にあてた。
(2) 心に残っていることを既に書いてあった作文の中から拾い出し、短い文で書かせた。何を書いたらよいかわからないのではなく、どれを書いてよいかわからない生徒が多い。主題を絞らせるためには、必要である。
(3) 中心文の特質を分からせた。中心文は、話題と結論が合わさって叙述されており、筆者の考えや感動が表されている。しかし、これだけでは豊かな文章にはなり得ない。
(4) 内容を詳しくするための事柄・様子・経過などを「縦と横の関係」で図示させた。その中で、必要な部分、不足な部分の取材(想起)をさせた。
(5) 書く事柄を絞って小さな場面または短い時間に限定させた。冗漫な文章やあちすじ作文を避けていくための練習としては、例えば、「その時のできごとを三分内で書く」などと指示し、例文を示してやった。
(二) 授業の考察
1、以前に書いたものから題材を選定したので割合スムーズに導入できた。
2、中心文を設定すると書きたいことが明確になる。それをいくつか合わせれば長い文章も可能だろう。
3、図式化は、カード操作法と似ているが、必要な材料を逆に求めていくので、観察や想起がより詳しくなる。
資料3「縦と横の関係」構想図例