教育福島0104号(1985年(S60)09月)-050page
博物館だより
縄文時代より続く救荒食物調理法
栃餅の作り方
−伝統技術復元調査より−
一晩つけた栃の実を「栃むき」で皮をむく
博物館では本年度伝統技術復元調査として救荒食物調理法をとりあげている。
秋の山野に実る種々の木の実は、古くから食料とされてきた。これら木の実は日常の食料不足を補うための補食として、さらには飢饉の際の救荒食物としても重要なものであった。しかし木の実の多くはアクが多く、アクを抜く作業が大切であった。栃の実は大型でしかも大量に集めやすいので食料として代表的なものであるが、アク抜きの複雑なことでも知られている。このアク抜き技術は照葉樹林文化の影響をうけて、縄文時代に東北地方で開発されたといわれている。
以下、館岩村水引での栃餅の作り方を紹介する。
九月末頃にひろい集めた栃の実は天日で充分に乾燥してから、イロリの上部に棚を作りそこにのせて保存する。二十年位保存することができる。食べる時には実を湯の中に一晩ぐらいつけて皮をやわらかくし、「栃むき」で皮をむく(写真上)。皮をむいた栃の実は流水で五・六日さらし(写真下)、さらに桶などに入れ灰水に二晩ほどつけておくとアク抜ける。
調理法はアクを抜いた栃の実をふかし、柔かくなった所にモチ米をのせてさらにふかす。これを臼でついて栃餅にするのが一般的である。栃の実を水を何度もとりかえながら煮てトロトロになった所で麻や晒木綿の袋に入れてしぼり、袋に残ったデンプン質を餅につく方法もあるが、この栃餅は色は白いがねばりが少ない。またトロトロに
煮た栃の実にソバ粉を加えて食べる方法もあった。
博物館では栃をはじめドングリ、ワラビ、松皮などの調理方法を復元してビデオテープに収録し、映像資料として展示する予定である。
皮をむいた栃の実はアク抜きのため流水にさらす