教育福島0105号(1985年(S60)10月)-046page

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わかりやすい教育法令

 

教員の兼職・兼業

 

一 はじめに

 

一 はじめに

 

公立学校の教員を含めて地方公務員は、全体の奉仕者として公共の利益のため勤務し、職務の遂行に当たっては全力をあげてこれに専念する義務を負っています(地公法三〇条、三五条)。このことから、公務員が一部の利益を追求する営利企業に従事したり、他の事業もしくは事務に従事したりすることは、その職責に反することになり、原則として禁止されていますがこの場合にも特例として認められる場合があります。

以下、兼職と兼業について、一般の地方公務員と教育公務員との違いに焦点をあててみていくことにします。

 

二 兼職の意義と内容

 

兼職とは、地方公務員がその所属する地方公共団体の他の職員を兼ねること、いわゆる併任ないし兼任の意味と解することができます。

一般公務員が兼職をする場合は、地公法二四条四項によって、重複して給与の支給を受けることはできませんが、教員の場合は地公法の特別法である教特法の二一条一項によって特例が定められています。すなわち、「教育に関する他の職」を兼ねることが本務の遂行に支障がないと任命権者(県費負担教職員については、市町村教育委員会以下同じ)が認める場合には給与を受け又は受けないでその職を兼ねることができることになっています。

例えば、町長が役場の職員を町教育委員会事務局の職員と兼ねさせる場合は、地公法の規定がそのまま適用され重複給与の支給は禁止されますが、県立のA高校(全日制)教諭をB高校(定時制)教諭と兼務させる場合は、教特法の特例により重複して給与の支給を行うこともできるわけです。

 

三 兼業の意義と内容

 

兼業とは地方公務員が、他の地方公共団体の職についたり、公立小中学校の教員が県立学校の講師を兼ねたり、また公務員として一定の職につきながら営利企業を自ら営んだり、その役員となったり、報酬を得て何らかの事業等に従事したりすることをいいます。

1 営利企業等への従事(地公法三八条)

一般の地方公務員は教員も含めて次のような規制がされています。(1)勤務時間の内外を問わずア)営利企業の役員の地位を兼ねること イ)自ら営利企業を営むこと ウ)報酬を得て何らかの事業、事務に従事することは原則として禁止されます。

(2)人事委員会規則の定める許可基準に基づき任命権者の許可があれば(1)の場合も従事できます。(3)勤務時間をさいて従事する場合は、勤務しなかった時間の給与は減額されます。

2 「教育に関する他の事業若しくは事務」の従事(教特法二一条)

教員の場合、地公法とは別に教特法二一条一項により次のような特例が認められています。すなわち「教育に関する他の事業若しくは事務に従事する」場合に任命権者の承認を得れば、(1)勤務時間内においても従事できる (2)人事委員会規則による許可基準によることを要しない (3)勤務しなかった時間について給与は減額されない (4)報酬を得て従事することができることとなっています。

このように、教育公務員は一般公務員に比べ広範に兼職や他の事業・事務への従事が認められますが、その理由はどこにあるのでしょうか。それは、ア)教育に関する兼職等は職務に熟達するという意味で一種の研修と考えられること イ)特定の分野では他に適格者が得られない場合があり、専門的能力を最大限に活用しようということにあります。

 

質疑応答

 

問 教育に関する「他の職を兼ねること」及び「他の事業若しくは事務に従事すること」とはどのような意味なのでしょうか。

1 「教育に関する」とは、学校教育、社会教育、学術文化に関することをいいます。

2 「他の職を兼ねる」とは、同一地方公共団体に属する図書館、公民館等の役員や学校の教員としての職を兼ねる場合などをいいます。

3 「他の事業に従事する」とは、私立学校を経営する学校法人等の私企業の役員になることをいいます。

4 「他の事務に従事する」とは、私立学校、各種学校、他の地方公共団体の設置する学校の教員としての職に従事することなどをいいます。

 

 

 


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