教育福島0106号(1985年(S60)11月)-040page

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3) 今後の展望

 

多目的スペースを利用した学習のあり方

 

学校教育の画一化、硬直化から、多様化、弾力化への変革を求めて、多目的スペース設置の補助制度が誕生したことは、前述の通りである。

本県では、まだ、設置校が十数校に過ぎない。しかし、使い、学ぶ側から要請される学習と生活のスペースという考え方は、多目的スペースを持たない学校においても大いに参考となることであり、百年来の伝統の一斉指導のみの授業から脱皮するための示唆を与えてくれるものと思われる。

 

一、教育システムと多目的スペース

 

教育のシステムにより、多目的スペースの設置のし方は異なる。我が国の設置の型は、次の五つである。

1、多目的スペース分離型

従来の教室が今迄どおりにあって、教室と離れたところに、多目的スペースがある型である。これは、一つの大きな「空き教室」が出来たと考えればよい。したがって、この離れの「空き教室」は、学年集会、学年給食、ティームティーチング、子どもの憩いの場等、多くの活用例があるが、従来の特別教室と同様の活用についての考え方で、教育システムの変革は余り期待できない。

児童生徒数の減少により「空き教室」がある場合は、壁や廊下側の戸を取り払い、廊下も活用した多目的スペースに改修することも、文部省の大規模改修補助対象になっていることを附記しておく。

2、多目的スペース隣接型

「教室」と離れたところでなく、教室と連続した空間に、多目的スペースが設けられている型である。言いかえれば、どの教室から出ても多目的スペースに出る構造で、従来の廊下を広げた形が多い。

これは、1の多目的スペースよりもスムースな活用を生み出す。例えば、学年単位にこのスペースのある小学校では、学級経営からティームティーチングによる学年経営に中心が移せる。即ち、複数学級を単位とした授業展開が可能になるし、学年教師の協力により、多目的スペースを学習環境として整備できるようになる。

また、中学校や高等学校での、教科ごとにブロックを構成し、その中心に多目的スペースを設置する学校は、授業での利用が便利なメディアセンターとして活用できる。

3、開放教室型

従来の「教室空間」を残しながらも、廊下側の壁を取り払い、連続した形で多目的スペースが存在する構造である。

即ち、廊下側は、壁のかわりに、書棚やパーティションで簡単に仕切るつくりである。これは、教室と多目的スペースの一体感が強まり、児童生徒の学習や活動の場が一段と広がる。

この型の建築は、従来の一斉指導のみの授業から脱皮が要請される。

4、セミ・オープン・スペース型

「教室空間」が可動性の間仕切りで仕切られ、多目的スペースに連続している型である。即ち、教室の周りの壁が移動あるいは取り外しでき、更に大きな空間をつくれる構造である。

一斉授業で他のクラスの邪魔にならないように、間仕切りがなされるようにできている。ここでは、3の多目的スペースより更に子どもの活動空間が広まり、単学級での活動から、学年会、学年合同の学習、全校の縦割班の交流等と発展し、閉鎖的な学級の壁が取り払われる。

また、多目的スペースは、子どもたちの憩いの場、談話の場、遊びの場、上級生との交流の場とし,学校生活を楽しくしかも子ども同士で成長できるような場となる。

5、オープン・スペース型

全体がオープン・スペースで、教室空間がなく、可動性の間仕切りや書棚等によって、空間を構成している型である。

この構造は、今迄の学校というイメージを一変させる。天井は高くて明るく、空間は広く、下にはジュータンが敷きつめられ、まるでホテルのロビーのような感じである。空間構成ばかりでなく、色彩も鮮やかで、原色も使われている。また、机や椅子・棚・物入れなどは、用途に応じていろいろな形や色をしており、とても美しい生活環境をつくっているのが特徴である。

ここでは、子ども自ら学習することを基盤とした、多様な学習を展開することができる。

 

二、多目的スペースの活用

 

多目的スペースの型により、活用の例にもふれてきたが、角度を変えて、活用方法の数例を紹介する。

1、学習単位としての活用

(1) 「完全習得学習」を行う場

あるところまで一斉に授業した後での個別指導の場とする。即ち、すでに一斉指導で学習目標を達成してしまった子どもたちは、「多目的スペース」に移動し、強化・発展学習を自学し、学習目標を達成しない子どもは、教室で個別指導や一斉指導を受けて完全習得にせまる。

(2) 「自由進度学習」の場

子どもたちが自分の学習ぺースで学習する場とする。即ち、自主的に学習を進める際、教室の中だけでは騒がしくもなり、集中できない場合もあり、個別あるいはグループ学習

 

 

 


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