教育福島0107号(1985年(S60)12月)-049page

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ふるさと探訪

県指定重要文化財(古文書)

塔寺八幡宮長帳断簡 九紙

所在地 会津若松市東山町石山宇和田乙三四四番地の七所有者 好沢理一

所在地 会津若松市東山町石山宇和田乙三四四番地の七所有者 好沢理一

会津坂下町心清水八幡宮所蔵の塔寺八幡宮長帳(八巻、重要文化財)が、その表書の年日記は中世会津の信仰生活を示し、裏書もまた会津内外の政治・社会および災異などを示すものとして、貴重な史料であることは周知のとおりであるが、この断簡はかつてその塔寺八幡宮長帳の一部をなしたものである。その年紀と寸法は次のとおりである。

第一紙 応永二年(一三九五)縦二七・〇p・横八六・〇p。第二紙 応永三年(一三九六)縦二八・〇p・横四一・〇p 第三紙 応永一五年(一四〇八)縦二九・〇p・横三八・〇p。第四紙 永享十二年(一四四〇)縦三〇・五p・横四二・五p。第五紙 永享:一三年(一四四一)縦三一・〇p。横三三・五p。第六紙 嘉吉二年(一四四二)縦三〇・五p・横三九一五p。第七紙 宝徳三年(一四五一)縦三〇・〇p・横四一・〇p。第八紙 永正二年(一五一四)縦二九・五p・横四一・五p。第九紙 天文七年(一五三八)縦三〇・〇p・横四一・五p。

料紙はいずれも楮紙であるが、紙質はそれぞれ異なり、第二紙は厚目で黄色味を帯びる。総体として、時代が下るにしたがって紙質が落ちる傾向がうかがわれ、第八紙、第九紙は最も粗末である。第四、五、六紙は部分的に貼り継がれているが、それが右から第六・五・四紙と逆時代順になっていることは、塔寺八幡宮長帳の体裁と同一である。この断簡の各年日記はその墨色筆跡によってそれぞれの記事が筆録される手順をうかがうことが可能であり、この点からも本断簡が原本であることば疑いがない。

塔寺八幡宮長帳には本断簡に相当する部分が現在欠失しているが、文化六年(一八〇九)成立の『新編会津風土記』および同じころ編纂の『続群書類従』に収める塔寺八幡宮長帳にはこの部分が含まれている。他方、東京大学史料編纂所が「若松町磯部常松蔵本」、明治二二年四月文科大学教授星野恒採訪、二四年二月影写了として架蔵する「磯部文書」影写本には内容・寸法ともに本断簡と同一のもの(ただし影写本の天文二四年の一紙のみが本断簡では欠失している)が収められており、また『改定史籍集覧』(明治三五年刊)に掲載の「塔寺長帳」にも「磯部常松所蔵文書」と注記されて本断簡の内容が収録されている。

以上の所見から、この断簡はかつて塔寺八幡宮長帳の一部を構成したものであることが明らかである。

ふるさとの文化財


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