教育福島0108号(1986年(S61)01月)-008page

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提言

 

日本の座標

武蔵野美術大学教授

桑原住雄

 

【筆者紹介】

 

【筆者紹介】

 

桑原 住雄・くわはらすみお

大正十三年(一九二四)広島生れ。昭和二十六年東京大学文学部美術史学科大学院終了。東京新聞社、朝日新聞社を経て同五十二年筑波大学芸術学系教授。同五十七年から武蔵野美術大学教授。

専攻はアメリカ絵画史、日本近代絵画。美術評論家連盟常任委員、国際美術評論家連盟会員でもあり、各国で日本の近代絵画について講演し、昭和五十五年、国際交流基金事業によりアメリカの大学、美術館など数か所で日本近代絵画について巡回講演を行った。また昭和六十年秋、NHKの市民大学で「日本の近代絵画」(十二回シリーズ)を担当した。

著者に「日本の自画像」、「日本画の内景」、「アメリカ絵画の系譜」等のほか、翻訳にB・ローズの「二十世紀アメリカ美術」S・バーナーダ「ベン・シャーン画集」など多数。

 

先日、友人から次のような話を聞いた。

東京のある大学で美術史の講座を担当している彼は、毎学年の初めに学生に答案用紙を渡し、知っている限りの画家の名前を書かせることにしているのだそうだが、その結果を見ると、ヨーロッパの画家の名が圧倒的に多く、日本の画家の数は三分の一か五分の一ぐらいだという。たとえば、ヨーロッパの画家の名前が十人挙げられているとすると、日本画家は三人か二人ということになる。その大学は美術系の大学ではないから止むを得ないとしても、この結果は確かにわびしい。

そこで彼は奮起するのだそうである。それから一年間、近代の日本人画家のあれこれについて彼は熱っぽく語って聞かせるのだ。そして学年末がくる。もう一度、答案用紙を配る。すると、ヨーロッパと日本の数が「見事に逆転しているのが判るんだ」といって、彼はニンマりした。かくして彼のナショナリズムに私は敬服し、その情熱に賛辞を捧げることになったのである。

 

学生が日本画家の名をあまり知らないのは美術系大学でも同じである。ミケランジェロは知っていても雪舟は

 

 

 


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