教育福島0108号(1986年(S61)01月)-023page
前述した対策の具体化1)ア、イ、ウの実践で児童を的確に理解しようとした。左の資料は、この実践例である。
(二) 実態に応じた指導
1) 問題の要因
この児童にみられる問題の要因は、ひとりっ子であり、幼少時に虚弱的な傾向が強かったというところにあると考えられる。
ひとりっ子、虚弱的傾向→母親の心配・悩み、理想・期待→過保護甘やかし、時には強制・支配的という一貫性に欠く養育態度→社会性の欠如、身体機能発達の遅れ→集団への不適応→母親の養育態度といった悪循環による影響が大きかつたものと考えられる。
そこで、この児童への適応指導については、次のようにした。
2) 指導実践の概要
ア、興味をもっている活動や仕事を通して成功感や満足感を味わわせるとともに、集団生活における助け合いや協力のすばらしさを感じとらせるようにした。
イ、この児童の優れているところや努力実践していることに気づかせるとともに、その長所を集団の向上のために寄与できる場を設定し活動させた。
ウ、この児童の個性や長所を認め、援助・協力を惜しまない学級の集団づくりにつとめた。特に、道徳、学級会活動、学級指導の授業に力をいれてきた。
エ、保護者へはたらきかけた。持に母親へは、養育態度について直接的にはたらきかけることより、望ましく変容していく児童の姿を知らせることにより、自分の養育態度に気づかせることが大切であると考え、学級通信や家庭訪問、懇談会で児童の良い姿を知らせた。
オ、児童の実態、問題の概要、担任としての指導方針など職員間の共通理解を図り指導の協力を得た。
(三) 指導の結果
1) 児童の変容
ア、集団活動に対し無関心であったが、成員とともに活動することができ、活動しながらの会話や笑顔も多くみられるようになった。
イ、集団の成員に対し、劣等感や不安感などをもっていたが、少しずつ解消されている。
ウ、一人ぼっち、わがままな言動などの逃避的傾向がうすれてきた。
2) 学級成員の変容
ア、問題をもつ児童への排斥が少なくなった。
イ、問題をもつ児童の意見や発言に耳をかたむけ、活動する場面では協力、援助の態度がみられるようになった。
3) 保護者の変容
ア、わが子の自主性を大切にし、活動や生活のし方をあたたかく見守るようになってきた。
イ、学校教育や担任の指導に対し、協力的、理解的な言動がみられるようになってきた。
四 研究の成果と今後の課題
(一) 成果
1) 問題をもつ児童の実態を幅広く分析的にとらえたため、目ざす児童像、指導内容、方法など、見通しを明確にして指導することができた。
2) 問題をもつ児童への指導援助では、児童の心の奥深くまでふれ、共感的態度で気持ちをよく理解してやることが、極めて大切であるという認識を深めることができた。
3) 問題をもつ児童への個人的適応指導とともに、学級成員への指導と保護者へのはたらきかけをしてきたため、指導の効果をあげることができた。
(二) 今後の課題
1) 適応指導では、児童の心の奥深くまでふれ、共感的な態度でよく気持ちを理解してやることが大切である。この方法として、今まで主に実践してきた観察記録法や質問紙法などだけでは不十分である。今後は、教育相談を中心とした共感的理解のし方について研究しなければならない。
2) この研究では、不適応の状態にある児童を対象とした。今後は、不適応以前の状態へ積極的にはたらきかけ、問題の発生を防止する指導のあり方を研究しなければならない。
資料2 児童理解の実践例