教育福島0108号(1986年(S61)01月)-034page

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科学部誕生

滝沢玲子

 

して、ただただ他校の科学部の活動をうらやましく思っているしかなかった。

 

教職について以来ずっと「いつかやってみたい」と思っていたことがある。それは「科学部の顧問として生徒とともに活動する」ことだった。小規模へき地校勤務ばかりの私にとって、体育系の部活動のみの部顧問であった。体育系の部活動に生きがいを感じている生徒たち。生徒会・常設部・スキー・陸上・水泳・合唱・駅伝と一人で何役も兼ねて活動しなければならない生徒たち。こんな生徒たちに「科学部をつくろう」とはとても言い出せなかった。そして、ただただ他校の科学部の活動をうらやましく思っているしかなかった。

こんな私が、今年の春、数人の生徒の要望に勇気づけられて、科学部の創設をお願いするよう決心した。職員会への二回目の提案でようやく科学部の設置が校長先生から許可されることになった。女子七名という少人数で、しかも全員がはじめての経験という状態でスタートすることになった。他の部活動との関係で、週に一回きりの活動で、しかも中体連大会が近づくと選手を兼ねているため開店休業の日が続いた。このような悪条件のために最初の研究テーマは途中で挫折を余儀無くされた。部員は意欲を無くし「新設科学部、はやくも廃部」の苦境に立たされた。

こんなおり、技術室の戸棚の奥にあった二十枚の植物標本が私の目に止まった。現在の科学部の生徒たちに生ききた活動をさせるには大きな動機づけを与え、興味を持続させる以外にないと考えた。そこでこれらの標本を部室に置いて生徒たちが自由に見れるようにした。そして、ごく自然に標本のことから湿原の植物へと話がはずみ、七名の目に輝きがもどった。動機づけ大成功。生徒からこれらの標本や湿原の植物について次々と質問が出てきた。この質問の一つ一つについて生徒といっしょに考え、調べることになった。標本について調べが進むにつれて、疑問点が多く残り、実際に野外に出て観察し、調査することになった。

野外観察では、標本と同じ植物が野生している場所がわからず学級全員に情報提供を呼びかけたり、アンケート調査をしたりして、少しでも手がかりを知ろうとする部員の姿もみられた。

手に入れた情報をもとに目的の場所を探したが、たどり着かず徒労に終わった日もあった。だからこそ、目的の植物が野生している場所を見つけた時は、部員といっしよに手をたたいて喜び合った。そして部員とともに野外観察の楽しさを体験した。

七月、八月、九月は、このようにしてまたたくまに過ぎていった。そして十月。調査収集した資料をもとにしての整理考察。日暮れは早く、下校時刻の五時はすぐだった。じっくり話し合う時間、じっくり考察する時間がほしかった。なんとしてでも調査の結果をまとめねばならないと思っていたのは部員も顧問も同じであった。調査のまとめに没頭している部員の姿は、忙しさの中にも楽しさがみなぎっていた。記録や標本に表紙をつけて綴じる。「できあがった」ずしっと重い感触。「やったね」。全員の目が研究テーマのラベルを見つめている。「みんなごくろうさん」。

こうして我が朝日中学校に科学部が誕生した。私たちはこの喜びをいつまでも大切にしながら、これからの部活動に生かしていくつもりです。

(只見町立朝日中学校教諭)

 

セがまちがっていましたので訂正します。−グラビアの熊倉小は広瀬小です。)

 

本誌十一月号の「新しい学校施設づくり」は大きな反響をよびました。ここでは広瀬小学校(左)と熊倉小学校(右)のもようをお知らせいたします。(なお、十一月号で写真説明がまちがっていましたので訂正します。−グラビアの熊倉小は広瀬小です。)

 

図書コーナーでの読書

(会津坂下町・広瀬小学校)

新入生を迎えて鼓笛隊の演奏

 

新入生を迎えて鼓笛隊の演奏

新入生を迎えて鼓笛隊の演奏

(喜多方市・熊倉小学校)

 

 

 

 


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