教育福島0109号(1986年(S61)02月)-047page
そのようにした。
○ D子は、よくおしっこをもらしたそうだから、汚ない。
D子の身になって考えるなどということは、全くのぞめない状態である。
自分は悪いことをしているのだという自覚が全くみられないところが問題である。弱い者いじめは悪であることに気づかせていく必要がある。
2) 仲間はずれにされているD子の意識
○ 誰かに話してみたところで、どうにもならない。
○ もう、いじめられることになんか慣れてしまった。
○ 自分ではどうすることもできない。何をされてもじっと我慢する。
いじめられても仕方がないというあきらめムードが色濃く、なにをされても受け身的な態度が問題である。意地悪をされたら、それを訴えるだけの自己表現力を育ててやる必要がある。
3) まわりの子どもたちの意識
○ いじめる側の子どもに同調する者が多い。
○ 見て見ぬふり。無関心。
○ 一人として、そのいじめを止めようとする子はいない。
○ もしも、自分がD子と同じようなことをされたらとってもいやだし、学校へも来たくなくなる。
見て見ぬふりや無関心などの傍観者的態度が、いじめる側の行為を助長していることが問題である。いじめを見のがさない勇気と思いやりの心を育てていく必要がある。
二、指導の重点
一人一人の子どもと教育相談を重ねることによって、現在自分の悩んでいることを話させ助言すれば、子ども一人一人に自己指導力が育成され、いじめのないよりよい学級を作ることができるであろうと考えた。
(一) 指導方法・内容
1) 全員に「悩みごとや困りごと」のアンケートや現実の日課表を書かせることによって、子どもの実態をより明確に把握する。
2) アンケートを分析する。
3) 全員を対象とした教育相談を実施する。
(二) 指導の方針
1) 保護者、学年、生徒指導委員会との連携を密にし、問題に取りくむ。
2) D子との接触の場を多くし、心の交流を図るとともに自己表現力を育てる。
3) 教育相談を通して、人権尊重、善悪の判断能力を身につけさせる。
4) 学級指導や教育相談を通して、いじめを許さぬ土壌作りに努める。
5) 「教室あのね情報」(資料1)を通じて、担任の指導方針、教育観、価値観などを保護者の方々に衆知してもらう。
三、指導計画(省略)
四、指導の経過と子どもの変容
(一) 四月「D子と母親の概要」
D子は、虚弱体質の傾向があり、細くてひ弱に見える。表情も淋しそうで生気が感じられない。アトピー性皮膚炎のため、肌のところどころがかさついている。しかし、身の回りの清潔さには気を配っている。運動技能はかなり劣るが、学業成績は上の中くらいに属している。
私は、さっそくD子との教育相談を開始した。D子は私のそばに来て、自分の家で飼育している小動物の話などをするのをとても喜んだ。しかし、話題が仲間はずれのことになると、急に口が重くなって、 「どうせ、話したって…」というあきらめムードがいっぱいで、なかなか話したがらなかった。
あせらず日にちをかけて教育相談を続け、D子が自分の口から話し出すのを待つことにした。
D子との教育相談を続ける一方、母親とも何度も話し合いをもった。D子に対する母親の過保護とも思える養育態度が気になったからである。
初めのうちは、「ほかの子どもと比べてうちの子は特別な体なので」と、そのことばかり強調していた母親だったが、「先生におまかせします」とい
資料1 教室あのね情報
教室あのね情報とは、担任から保護者にあてた「あのね……」で始まる簡単な便りのことである。その日一日、学校や学級であったできごとや子どもたちの様子を保護者の方々にもお知らせしよう、あわせて子どもたちに人の話を聞く力、聞いた事柄を筆記する力を身につけさせようという目的で始めた。(私が口頭で話したことを子どもたちが自分のノートに筆記するやり方)
−(例) あのね情報5月14日の記録より−
あのね、SさんとKさんが、真っ赤な花のつけたサボテンをプレゼントしてくれました。「今ごろ、どうして?」と不思議がっていますと、「きのうは母の日。今日は教育の母の日だから」と言うのです。
「教育の母の日」とは、二人が作った言葉です。私は好きなサボテンをプレゼントされたことはもちろんですが、それよりももっともっとうれしかったのは、「教育の母の日」という言葉遣いでした。私は未熟者ですので、まだまだその言葉には値しない人間ですが、子どもたちからそのような言葉を聞くなんて、とってもうれしかったです。
その言葉に恥じぬようがんばらなくちゃと強く感じました。(後略)
−保護者からの返事−
今日のあのね情報は、とてもうれしく喜んで拝読しました。とてもとても素晴らしいことですね。
生徒たち、一人一人が素晴らしく成長しているのですね。6年B組に栄光あれ!と祈っています。
なるべく心温まる情報を………と祈っています。
父母たちも仲よくクラス作りに励みたいと思います。