教育福島0109号(1986年(S61)02月)-049page

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は恐くて言えない。どうしたらよいか」ということであった。

まだ微力ながらも、もうやく自分たちの問題として考えていこうとする姿勢が出てきたことは、なによりもうれしいことであった。

2) アンケートを通しての教育相談

アンケートや日課表をもとにして、毎日時間の許す限り、教育相談を実施した。訴えのほとんどは、A子、B子、C子の三人についてだった。大なり小なりどの子もその迷惑を被っていた。

女子間において君臨しているといっても過言ではないA子たち三人だったが、今ではむしろ外の子どもたちから狐立しているという状態であった。だが、三人はまだそのことに気づいていない。

彼女たちも彼女たちなりに悩んでいたのである。下学年の子から「あなたたちは暴力団ですか」と言われたり、「不良なんだよ、あの人たち」「あっ、ツッパリ姉ちゃんのグループだ」などと指さされたり、また、ほかの学級の子どもたちの心ないうわさ話に傷ついたり…。この子たちも人一倍、感じやすい心を持っていた。

うわさを耳にされて心配しておられる保護者の方々には、「今、ようやく子どもたちの側から悩みを訴えるだけの力が出てきた。その心を大事にしていきたいので、一生懸命立ち直ろうと努力している子どもたちをそっと見守っていてほしい」旨を説明した。

それに対して、 「まわりの人間が騒ぎたて、先生や子どもたちの努力を無にするようなことは慎しむ」と言って下さり、協力を惜しまなかった。(資料3)

 

資料3 保護者からの手紙(10/21)

先日はお忙しい中、遅くまで、本当にありがとうございました。

今日、娘が学校から帰ってきての第一声が、「今日は六年B組の女の子全員で遊んだよ。とっても楽しかった」という言葉でした。

何だかとても救われたような気持ちで、私の方までうれしくなってしまいました。

先生のご努力が、早くも実を結ぼうとしています。心から感謝するとともに、これからもよろしくご指導のほどお願い申し上げます。

 

このように、学級のことを真剣に考えて援助して下さる保護者の方々がいらっしゃるかと思えば、その反対に学級とは縁もゆかりもないかたが、おもしろ半分に心ないうわさを近所に流し立ち直ろうとしている子どもの心を傷つけるという一幕もあって心を痛めた、

生徒指導主任のI先生には、いつも相談にのっていただき、ご指導を受けた。

3) D子の変容

十月も半ばころになると、D子へのいじめは今までのことがまるで嘘のように、すっかり陰をひそめていた。

明るい歓声をあげ、級友と一緒に遊ぶD子の姿が、ごく普通に見られるようになっていた。鼓笛隊のパレードでまわりから推薦され、鼓笛の花形リングバトンを担当するまでになっていた。

(五)「孤立するC子と心の交流を図る」

1) 孤立するC子

事実上、三人のみとなったグループの主導権は、A子よりC子へと移っていった。時々、A子はC子に冷たくあしらわれることもあった。

十一月に入ってまもなく、A子とB子から教育相談を依頼された。今まで仲よし三人組の一人であったC子のことが猛烈にきらいになってしまったというのである。あんなに仲のよかった三人なのに、主導権がC子に移ってからというもの、グループ内に深い溝ができてしまったのである。

二人との教育相談が終わると、すぐ待ちかねたようにC子がやってきた。教育相談をしてほしいという。C子は目に涙を浮かべながら、「自分はクラスの中で一人ぼっちになってしまうような気がする」と心配している。事実陰で意地悪をするC子に対して、子どもたちは強い反発を感じていた。今までクラスで一番いばっていた彼女は、みんなから敬遠され始めたのである。子どもたちの教育相談の内容のほとんどがC子一人に向けられたことからも容易に想像がついた。

その反面、少し生意気なところがあっても憎めない性格をもっているA子やB子を少しずつ受け入れるようぼなってきていた。三人とも自分たちの行動を反省する気持ちが芽ばえてきていた。その気持ちを大事にしたいので、三人には気づかれないように外の子どもたちの協力を求めた。

C子とは、この後、何回も話し合った。C子との教育相談では、反省する気持ちを持ちながら、実際にはそれと裏腹な言動が多いことに気づかせるのに重きをおいた。

放課後、職員室へむかう私の後を何度追いかけてきたことだろう。目にいっぱい涙をためて「どうしたらいいのか」とせっぱ詰まった表情で問いかけてくるC子の真剣な姿に、私の方がたじたじとなるくらいであった。

その姿を何度か見かけた生徒指導主任の1先生がおっしゃった。 「あの子は、先生にすがってきている。力になってやってほしい」と。

2) D子が転校する!

十一月十日、D子の母親から思わぬ連絡を受けた。姉の勤務の関係で、どうしても転校せねばならなくなったというのである。今、D子をいじめる子は一人もなく、表情も明るく生き生きとし、友だちがたくさんできたと喜んでいたのに。母親も「今まで学校のことは根ほり葉ほりたずねても何にも話してくれなかったのに、.最近は自分の方から先生のことやお友だちのことをどんどん話してくれるんですよ」と喜んでいた矢先であった。これには学級

 

 

 


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