教育福島0113号(1986年(S61)08月)-047page

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重視している。

本年度は、勤労生産コースに重点をおき、各学級ごとに校地内に菜園を設け、野菜や草花栽培をすることにした、

まず、学級ごとに区画した畑づくりをした。これはなかなか大変で、みんなフーフー言って大騒ぎとなり、どうなることかと先が少々あやぶまれた。

そして、種まき、水かけ、除草、肥料やり、消毒と、朝、昼、放課後と仕事に励む毎日が続いた。

「アッ、芽が出たよ!」と普段無口のA君の言葉に、芽が出たことともにA君がしゃべったということに、学級全員が歓声をあげた。この時ほど学級の和を実感したことはなかった。そして誰か一人が仕事を忘れたり、怠けたりすることが、生育に支障をきたすこと、みんなで力を合わせないと収穫までこぎつけることができないことを学びとったことは大きな成果であった。

作業をしている時の生徒たちの顔の何と明るいことか。そして意欲に燃えていたことか。みんなで協力し、手間をかけると、りっぱに成長した野菜は、自分に何かを語りかけるような気がするという子どもたちの心には、思いやりのある、助け合いの仲間意識が芽生えてきたと確信している。

やっと収穫の時がきた。いっせいに菜園に入り、りっぱに実った「かぶ」を手にした時の生徒たちの喜びようはなかった。

 

▲これが、ぼくたちのつくった“かぶ”だ……

▲これが、ぼくたちのつくった“かぶ”だ……

 

朝の会だぞ、みんな集まれ

県立いわき養護学校

 

本校は、今年開校四年目を迎えた。本校では、通学制の精神薄弱児を対象にしており、現在、百十六名の児童生徒が、一般バスや電車、通学バス等で通学している。

毎週月曜日の二校時には子どもたちの大好きな「合同朝の会」がひらかれる。広い体育館に全校生と先生方が集り、話を聞き、歌をうたい、ゲームをしたりリズム遊びをしたりする。

この会では「来ることが楽しい学校に」を主眼として、一週間の学校生活の動機づけをねらっている。そして、たくさんの人の中で、きまりを守れるようになる、学級以外の友だちや先生と仲良くなるなど、楽しい学習の場になってほしいと願っている。

「会」は、儀式的な部分とレクリエーション的な部分で構成され、企画、運営には特別活動係の教員と集会委員会の生徒があたる。「みんなの歌」と「今週のバラエティアクション」は、子どもたちにとって最大の楽しみで、みんな大活躍である。「みんなの歌」は、音楽係の先生が担当で、季節の歌や行事の歌を選んで歌う。歌に合わせて簡単なふりつけをつけたり、手作りの楽器で合奏したりもする。「バラエティアクション」では、歩く、走るの基本動作を音楽に合わせて模倣したり、ふりつけを工夫したダンスをする。

こうした集会活動を通して子どもたちは、たくさんの人の中にいることになれ、活動する喜びを知り、自分の役割を自覚した活動ができるようになる。また、学級集団を離れて励ましの言葉をかけたり、手をとったりすることにより、思いやりや助け合いの気持ちが芽生えてきている。

また教師側にとっても、単に学級の子どもだけでなく、多くの子どもと接する機会となり、子どもを再発見する場ともなっている。そのうえ、会の運営のための事前話し合い、ダンス等の実技研修等を通して、全職員が一人一人の子どもの障害や指導の手だてを理解し、相互の指導の力量を高めており、楽しい学校づくりは着々と成果をあげている。

 

以上、「楽しい学校」づくりへむけての実践例を紹介しました。その他、県内各学校においても、それぞれ創意工夫をこらした生徒指導やいじめ防止対策を実践しているわけですが、ここにあげた例が、一つの発想の転換のきっかけとなり、他者へのいたわり、生命への慈しみ、正義や勇気、自己抑止力など、人権や心の教育に精力的に取り組んでいかれることを期待します。

 

▲お一い、こっちだよ、みんなおいで一

▲お一い、こっちだよ、みんなおいで一

 

 

 


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