教育福島0114号(1986年(S61)09月)-006page

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提  言

『常用平易な』

福島県立図書館長

菅井 旭

 

【筆者紹介】

 

【筆者紹介】

菅井  旭・すがいあきら

昭和 六年 福島市に生まれる

昭和二十九年 東北大学法学部卒業

昭和五十年  東京事務所行政課長

昭和五十二年商工労働部労政課長

昭和五十四年 総務部地方課長

昭和五十六年 保健環境部次長

昭和五十七年 県中行政事務所長

昭和五十八年医科大学事務局長

昭和六十一年図書館長となり現在に至る

 

吉村昭氏といえば、「戦艦武蔵」などで著名な作家である。ある時、大意次のような氏の随筆を読んだ。

「某日、区役所からのチラシが配られて、見れば『クソ剤』の配付についてのお知らせとある。仰天してよくみれば、クソ剤の下に、駆鼠剤とカッコ書きがあって、やっと納得したわけであるが、推測するに、区のお役人は、区民のおおかたは、駆鼠剤の文字は読めないかも知れないど考え、クソ剤と書いてはみたものの、語感の及ぼすところを再考して、改めて、駆鼠剤と、註を加わえたものであろう。いわば、お役人の親切ごころというものであるが、市民の立場から言えば、こんな持って廻った表現をするより一鼠退治の薬剤の配付、と書いてもらった方が助かるのである」

筆者は、勤続三十年を超える地方公務員であるが、地域の市民として、時に町内会の役員などもっとめる。

実は、かって、市民の立場で、右と同様の体験をした。吉村氏の随筆を読むに及んで、市民の立場からは、まさに同感であり、公務員の立場からは、一言もないと感じた次第である。

市民と行政のかかわりは、出生に始まる。市民は、子どもが生まれると、十四日以内に市町村の窓口に、出生届けを出すことになっているが、その際の子どもの名前は、常用平易な文字を用いなければならないのである。

ところで、漢字には、常用漢字があって、一般の文章には、この常用漢字を用いることとされているのは、御承知のとおりである。だが、人の名前に限っては、この常用漢字のほかに、人名漢字という、かなり難かしい漢字を使用することが許容されていることも、大方は、御承知である。

カナ文字、かな文字は、平易であるが、同じように、戦後の教育制度で育った五十歳以下の市民にとって、ローマ字もまた平易であると思うのだが、ロー

 

 

 


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