教育福島0114号(1986年(S61)09月)-007page

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提  言

 

マ字の名前の届出を市役所では受付けてくれない。

ここにおよんで、「常用平易な名前」の、それこそ、平易な解説が必要となり、現に、戸籍法では、施行令というものを別にこしらえて、その解説をする仕組となっている。

教育行政を含めて、地方自治行政というのは、いうまでもないことだが、市民の存在のうえに成立っているから、行政の担当者は、行政の内容について、できるだけ市民に理解してもらう義務がある。

しかし、市民と行政の間には、官庁用語というものが桓根となって、そのコミュニケーションを阻害することがすくなくないのである。

そこで、良心的な行政マンは、できるだけ常用平易な用語によって、行政を表現しようと努力をする。ただ困ったことに、官庁用語には、定義ができあがっているという利点があって、官庁内部の間では、まことに便利なのである。しかし、それを乗り越えることこそ、良心的な行政マンの意欲というものであろう。

福島市は、県庁所在地であるから、国や県のお役所が多い。そのなかに、警察署や税務署など、署というお役所がある。

署という言葉を辞典にあたってみると、「網を置いて、鳥やけものの獲物をとるのに、人数を分けて配置したことに由来し、そこから、部署の意に用いられ、ひいて役所の意になった」のだそうである。

ところで、署というのは、普遍的なお役所の名称ではない。署の共通点は、署に勤務する公務員が、その業務に関して、司法捜査権、犯罪の捜査権を行使するのである。税務署もへ営林署も、労働基準監督署も、みなそうである。

つまり、「網を置いて獲物をとる」という語源に由来する役所の中には、犯罪捜査を仕事とする人たちがっとめているわけである。

ところが、同じように、司法捜査権を持つ公務員の中に、麻薬取締官という職種がある。テレビ活劇でおなじみの「麻薬Gメン」である。この人たちの勤務する建物は、署とは言わないで、「麻薬取締官事務所」というのである。

因みに、労働基準監督署も、麻薬取締官事務所も、戦後の創設にかかるものである。

常用平易な表現というのは、行政マンの意欲と良心にほかならないのではなかろうか。

それにしても、最近中央官庁が、「○○ポリス構想」とかいって、市民のなじみのない官庁コトバを乱造してくれるのには困るのである。

 

県立図書館社会科学コーナーの受付風景

県立図書館社会科学コーナーの受付風景

 

 

 


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