教育福島0115号(1986年(S61)10月)-033page
◎宿舎での生活
四回の食事があった。吾妻中生の配膳の手伝いや食事の世話も自然にふるまってくれたことが学校差や障害を飛びこえなごやかな雰囲気をつくってくれた。二日目になって自主的な活動が多く見られるようになつた。寝食を共にすることにより、盲生の生活行動を理解することができたと思う。食事の時など野外活動の共通の話題で同じ中学生仲間という意識で大いにしゃべりながら食事する光景がみられた。
◎解散式
帰路の車中では、お互いの気心が百年来の友だちのように話し合えた。吾妻中に到着し、吾妻中教頭先生の「本当の交流は、これから始まるんだ」という解散宣言を胸に、吾妻中学校で栽培した梨をいただき帰校した。
五 交流教育の成果
十月二日、合同野外活動の反省会を開いた。今回の交流活動についてさまざまな意見や感想が出されたのでそのまま紹介する。
生徒A「とにかく楽しかった。短い期間に友だちがたくさんできた」
生徒B「フィールドワークなど盲学校の生徒だけではできないようなものがやれてとてもよかった」
生徒C「吾妻中学校の生徒には、荒っぽい人もいたが、いろんな性格の人がいておもしろかった」
生徒D「いつも後から押されて行動しているようでつかれたが愉快だった」
生徒E「盲学校の中では経験できな
いものをたくさん経験」た」
生徒F「吾妻中学校の生徒はみんな
親切だった」−
以上のようによかったという感想が圧倒的に多かった。
消極的な意見としては、
生徒G「吾妻中学校の生徒が多すぎて、自分だけ一人ぼっちになった」
生徒H「吾妻中学校の生徒は自分たちばかりでおしゃべりしている」
生徒1「フィールドワークでむりやり悪い道を走らせられた」
こうした感想を述べた三人の生徒はいずれも性格的に消極的で声が小さい。
しかし、これらの生徒たちも交流はよかったと言っており、交流そのものを否定するような意見は聞かれなかった。
また、地域協力者の意見としては、
A「県教委がこのような交流を考えてくれることに、大きな教育の変革を感じ、その意義の深さを改めて認識した」
B「やっぱり子ども同志ですね。障害なんか意識していないみたいに活発にやりとりしている」
以上が代表的な意見であるが、いずれも交流の成果を高く評価している。
六 今後の課題
先生方の反省会では、全体的に今回の交流に大きな成果があったと認めたものの、次のようなきびしい意見も出された。
(一) 生徒数の違いが大きすぎた。吾妻中学校と本校との生徒の比率は十対一であり、みんなでちやほやされる反面、消極的な生徒はおいてきぼりにされる。
(二) 一対一、もしくはそれに近いものでないと、人間としての理解が深まらないのではないか。
(三) 交流を通じて伸びる生徒もいる反面、萎縮する生徒もいる。きめこまかい指導が必要である。
食事も楽しい交流
(四) フィールドワーク、ウォークラリ一など、今後、交流を計画する際大変参考になった。ただ、競技としての要素をもたせるためには改善すべき点がたくさんある。
交流の本来の趣旨は、人間的理解を深め、望ましい人間関係を育成していくことにあるとすれば、深めるための相当の時間が必要である。
各校とも多忙な現況にあって、どう継続させるか、また心の交流をどのようにして深化させるか。
この二点は今後の重要な研究課題となろう。
まとめ
以上が吾妻中学校との交流のあらましであるが、総体的に見て成功であったと言える。障害児の中でも、盲学校の生徒はことばが使えるので交流が進め易い。それに音楽が好きなど、同世代の者と心情的に共通するものも多い。本校としては、交流教育のほか、一般の弁論大会などにも出場させて、人との交わりを今後も大いに拡大していきたいと思っている。