教育福島0117号(1986年(S61)12月)-047page

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いということである。初めての事ゆえ戸惑い、上司に相談のうえ葬式に参加した。通夜から忌明けの行事まで地域の方と共に行動し、鹿児島県とは異なる白河の葬儀の風習を経験することができた。この出来事をとおして地域の方々と懇意になれ、改めて地域の一住民となれたような気がする。古きよき伝統の残る歴史の町のよさをしみじみ味わった。

鹿児島県の目で福島県を見つめ、福島県の目で鹿児島県を見つめることのできる幸せをかみしめ、福島県の教育のふところの深さをじっくりと学んでいきたい。

 

本県から鹿児島県へ

 

教育に情熱

鹿児島市立伊敷中学校教諭

小井戸雅 典

 

務し、校長先生はじめ研究熱心な先生方に囲まれて毎日を過ごしています。

 

幕末から明治維新にかけて我が国の歴史に多大の影響を与えた藩主島津斉彬に代表される薩摩藩、そして近代日本の黎明期に活躍した西郷隆盛、大久保利通、初代文部大臣の森有礼等多くの逸材を輩出した鹿児島県に派遣され、現在、鹿児島大学教育学部代用附属、鹿児島市立伊敷中学校に勤務し、校長先生はじめ研究熱心な先生方に囲まれて毎日を過ごしています。

本校は五十万都市鹿児島市の北西に位置し、周囲は住宅地や県立短大はじめ高等学校、各種学校などがあり、静かな文教地区の中にあります。生徒数千五百八十名、職員数六十五名という県内有数の大規模校であるとともに、県内の中心校として市内はもとより、管外あるいは他県からの来訪者が数多く、誇りと伝統に輝いている中学校であります。

本校教育の基調は、●人間尊重の教育 ●主体性確立の教育 ●創造進展の教育 ●個性伸張の教育 ●敬愛信同行の教育 の五綱をもとに教育目標を次のように掲げています。

「自らの可能性を信じ、心身ともに健康で、正しい判断力と豊かな創造性を身につけ、目的に向かって、ねばり強く実践する生徒を育成する」

この目標を受けて活力あふれる教育が展開されていますので、その一部を紹介します。

毎朝七時四十五分には全教師、全生徒による朝作業がはじまり、愛校心を育てる奉仕作業が展開され、ほとんどの生徒からは元気のよい挨拶が返ってきます。校内の教育環境もよく、グリーンタイムで栽培した一人一鉢の草花が校舎周辺を美しく飾り、階段のコーナーやトイレなどには、身近にある野草が生けられ、その野草の説明なども書きそえてあるなど細部にわたる教育的配慮が見られます。

また、全校朝会時における生徒会主催のソシオドラマは、日常の校内生活や問題点を全生徒に投げかけ、生徒自身の手で解決を図るなどユニークな試みがなされています。

これらの外に注目するものが数多くありますが、その原動力になっているのは、なんといっても本校の先生方の教育に対する情熱です。私が一日の仕事をまとめ帰途につくのは十九時か二十時頃、この時間だとほとんどの先生方は、それぞれの教室や会議室に分かれ、まさに教科や領域の研究の真っ最中、最終退勤の先生が校門を出るのは二十三時過ぎとのことで、しかも、毎日繰返されていることを知り驚かされます。

本校は昭和二十六年以来鹿児島大学教育学部の代用附属校として毎年六月に研究公開をし、今年で三十五回を数えるに至っています。したがって、その重責に応え、さらには鹿児島県の教育をリードすべく全教師が強い決意を持って研究に取り組んでいます。

また、九月から十月にかけては、鹿児島大学からの教育実習生百五十名程実習に来ますので、この期間は校内が一層活気にあふれます。

鹿児島県に赴任してまだ半年そこそこでありますが、鹿児島県民が大変温かな人情家であることに気付きました。そして、これは学校における「郷土を知り」「郷土を愛し」「郷土を創る」の三つの心情や行動力を育みながら、郷土をのりこえて、日本国内においても、また、国際社会においても広い視野に立って行動できる心豊かな児童生徒を育成することをねらった「郷土教育」の現れであり、まさに、幕末以来世界的視野に立った薩摩の教育が今も受け継がれているあかしのようにも思われました。

残る日々一層研さんを深め、鹿児島の教育をつぶさに体験し帰福したいと決意を新たにしているところです。

 

全校朝会におけるソシオドラマ風景

全校朝会におけるソシオドラマ風景

 

 

 


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