教育福島0120号(1987年(S62)04月)-041page
(三) 関係づけて考える態度の育成
−関係づけるということについて−
人間は、言語を通し思考するが、その際、関係づける力が大きな位置を占め、思考の進展、展開に常に必要とされる能力である。あるものと別のあるものとの関係を結びつけながら、思考は展開されていく。その結び付きが客観的に正しく理にかなっていれば、その思考は正しく、また思考した結果を他人に納得してもらうことができる。
また、関係の結び付けが出来なかったり、まちがったり、客観的に不正確であったりすれば、思考は浅いものとなり、結果は不確かなものとなるであろう。関係の結び付きが次から次へと幾重にも重ねられていくことによって対比、選択、要約などの諸能力も連なっていくことが期待できると考えられる大切な要因である。このようにあるものと別のあるものとの関係を結び付ける能力が関係づける力である。ただ問題は、この「あるもの」とは具体的に何であるかということであろう。算数科で養うべき能力は、日常の事象を数理的にとらえ、筋道を立てて考え、処理する能力と態度の育成であり、さらに言えば数理的に理解し、表現する能力である。このことから、関係づける力における「あるもの」とは次のような内容が考えられる。
●ことば、言語記号の表す事物、事象現象、物の見方、考え方、感情、論理、理解者の経験など
そこで本校では、特に理解者の経験の一部分である既習事項と自分の考えと友だちの考えとの関連、発展や既得体験との関連、日常生活との関連との関係づけに視点をあて、研究を進めることにした。(四) 授業の実際と考察(低学年の例)
1)指導の方向
(ア)「課題意識の高揚、喚起」では
・既習事項のつまずきや、既習の学習の中で身についた偏った見方等を的確に洗い出し、主体的に学習していけるよう工夫する。
(イ)「課題解決の見通し」では
・子どもなりの考え方や、学習の筋道を的確に予想し、児童が陥りがちな誤った見方、考え方を想定した上で、指導の手順や活動の順序を計画する。
(ウ)「解決の多様化」では
・子どもが持っている固定観念や画一的な考え方を的確にとらえ、鋭くゆさぶりをかけて概念くだきを図っていく。
(エ)「適用・強化」では
・子どもが自分なりに工夫し、追究し、試行錯誤しながら結論を導びき出す場を活動の流れの中に位置づける。
(オ)「解決結果の意味理解」では
・まとめの際、何がわかり、何が不十分か、あるいは、既習の方法で解決できるのか等、振りかえさせる工夫をする。
真剣に学習する子どもたち
2)結果と考察
・一学年の「ひき算−一」や「二十までの数」の指導では、問題提示においては興味や関心を示す図を用い、子どもの心をゆさぶり、自ら疑問を感じ、意欲的に学習を進めさせることができた。
・二学年の「長さ−一」の「算数の教科書のたての長さは、横の長さよりどれだけ長いか調べてみよう」という学習では、何かくらべる方法はないか、何かを使ってくらべられないかという考えが出され、任意の測定物から普遍単位の必要性に気づかせることができた。
五、成果と課題
(一) 成果
○今までの算数の学習が課題解決に必要なことを覚え、習得するだけであったものが、自分なりのうなづきや成就感を味わい、さらに考えや意味を発展的にあてはめ、日常の数理化まで高めることができるようになってきている。
○学習事項を既習事項との比較から相違点、類似点を見つけ出し、どうすればよいのか、既習事項を学習事項にどのように結びつければ答えが出せるのかを、自らの手で見つけ出せるようになってきている。
(二)課題
○子どもたちの反応を一人一人に対してするどく、くわしくとらえていく工夫。
・「わかりましたか」という教師の問いに、「はい、わかりました」という返答で学習課題を把握したと思う錯覚の是正。
・四十人には、四十人のわかり方がある。それに対応する工夫。
○学習の見通しをたてることができるようにするための指導援助の工夫と承認のしかた。
・「どう解いていけばよいのか」、「今までに学習した〜や〜が使える。あてはまりそうだ」等、根拠を明確にして学習の見通しを立てていく習慣化
○算数の学習のしかたをわからせる指導法の工夫
・筋道を立てて考えることの訓練