教育福島0120号(1987年(S62)04月)-048page

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図書館コーナー

まちゃむらの図書館

中小図書館こそが図書館

 

中小図書館こそが図書館

もう二十年以上昔になりますが、日本図書館協会が、中小図書館を対象に全国の図書館調査を行い、「中小都市における公共図書館の運営」という報告書を出しました。この時、最も話題となったのは、この中で「中小公共図書館こそ公共図書館である」と言ったことです。つまり、住民が本当に望んでいるのは、大都市に建つ大きな図書館ではなく小さくてもいいから住民に身近で役に立つ図書館であるということです。そういう意味においては、九十の自治体の内八十までが町村の当県では町村立図書館こそが重要であると思われます。

 

低い設置率の町村立図書館

現在、県内には十五市町村に図書館があり、特に市部では設置率百パーセントとなり、今後はいかに分館を整備していくか、というところまできています。

しかし、町村においては設置率が六・二五パーセントにすぎず、これは東北で最下位、全国でも下から四番目というものです。

ところが、それらの町村図書館をみてみますと、なかなか市の図書館では出来ないユニークな活動をしています。今回は、これらの図書館を紹介しながら町や村の図書館について考えてみたいと思います。

 

きめ細かいサービスができる小さい町の図書館

まず初めは、県内で初めて町立図書館を設立した棚倉町立図書館です。開館が昭和五十四年でもう八年前のことになります。この図書館の開館が他の図書館の開館に大きな影響を及ぼしたことは言うまでもありません。開館当時の話を聞いてみても初めての試みとしての苦労が偲ばれます。

この図書館では、毎年読書感想文作品集「けやき」を出しています。これは昭和五十五年から子どもたちの読書の動機づけとして行っているもので、毎年千編以上もの応募があり、すっかり町民の中に定着しているようです。また、町村図書館で最初に地域への巡回貸出を始めたのもこの図書館で、現在十三箇所約一万三千冊もの貸出があります。

そして、これに続いて昭和五十五年には、船引町図書館が開館しました。ここは、建物としても町立図書館にふさわしく郷土資料室、視聴覚室を設けてあります。また、この町にゆかりのある竹下夢二の作品等を展示している「夢二ルーム」は、この図書館の最大の特徴です。毎年行っている「おはなしの絵展」も七回目を数えています。

そして、近年開館したものに昭和五十九年開館の双葉町図書館と昭和六十年開館の岩瀬村図書館があります。この両図書館の利用統計をみてみると、住民一人当りの貸出冊数が大変多いことに気付きます。これは、県内の市立図書館と比較して多いというばかりではなく、全国的にみてもかなり高い数字です。両館とも二、三年前に開館したばかりの図書館だから当然という意見もありますが、もう一つこれらの図書館に共通している点は、いずれも人口一万人以下の小さな町の図書館であるということです。つまり、小さい町であればあるほど地域に密着したより細かいサービスができるということです。そして、活動の特徴も地域に密着したサービスにあります。図書の収集についても双葉町図書館では、原子力関係図書を集めていますし、岩瀬村図書館では農業関係の図書は勿論のこと自動車や農機具のカタログ・パンフレットから果ては全国の村勢要覧まで集めてしまいました。また、行事にも力をいれ、親子読書教室や手作り絵本の会、読書感想文・感想画・多読書のコンクール等積極的に行っています。さらに、岩瀬図書館では、村民の本の購入の取次サービスまでしています。そして、この二つの図書館とも館報等を通して住民と積極的に対話の場を設けようとしています。

町や村の図書館は人口が少ないゆえに利用を延ばすのは大変なことです。しかし、住民一人一人と対話し顔を覚えていくことが出来るのは、こういう図書館の強みであり、素晴らしいところです。そして、少しでも住民の中へとけ込もう、少しでも利用してもらおうという姿勢が重要であることをこれら町村図書館が示しているといえるでしょう。

 

地域に密着した岩瀬村立図書館

地域に密着した岩瀬村立図書館

 

 

 


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