教育福島0121号(1987年(S62)06月)-009page

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分に行われず、基本的な生活習慣が身についていない児童生徒が増えてきている。

洗顔、歯みがき、手洗いなどの衛生習慣や、服装、頭髪、ことばづかい、礼儀作法など、日常生活上欠くことのできない基本的行動様式をきちんと身につけ実践できるように指導を充実することが特に望まれている。ただ、教師の指示・命令により一方的におしつけるのでなく、これら基本的な行動様式の必要性を十分に理解させ、児童生徒一人一人の特性や生活状況に応じて自ら身につけていけるように、継続的な指導が大切である。

基本的な生活習慣が形成されていないと、学校生活を送る上でも支障をきたし、好ましくない生活態度や問題行動の発生に結びつく危険生を十分にもっている。学校をすべての児童生徒にとって、秩序と規律に満ちた人間形成にふさわしい場とするためにも、基本的な生活習慣の指導を重視する必要がある。

 

二、望ましい人間関係を育てる生徒指導

 

全校が一体となって生徒指導を効果的に推進するためには、全教師の一致協力した指導体制が特に必要である。全教師が深い信頼関係によって結ばれ、一人一人がその長所を生かし、一体となって動き、何でも率直に話し合うことができる人間関係が基盤となって、はじめて生徒指導の成果が期待される。

教師間のこのような人間関係は、児童生徒にも好ましい影響を与え、学校全体が楽しく、意欲と活気に満ちた場となり、充実した生活を送ることができるようになる。

また、教師と児童生徒の間に信頼関係を育てることが、望ましい人間関係を促進する上で特に大切である。児童生徒にとって、自分を真から理解し何でも相談にのってくれる教師、授業では教え方がうまく、確かな学力をつけてくれる教師、このような教育愛と実践的指導力を身につけた教師は、特に魅力的であり、このような教師には大きな信頼を寄せてくれるものである。

児童生徒相互の人間関係については、お互いに認め合い、励まし合うなごやかな雰囲気づくりが大切である。自分勝手なわがままな行動をしたり、他人の困ったことを喜んだりする風潮は厳に戒めるようにしなければならない。教師が児童生徒とのふれ合いの機会をできるだけ多く持ち、何でも気軽に話し合える雰囲気づくりに努めるとともに、授業を充実させ、わかる授業、魅力的な授業の創造に前向きに取り組むことにより、教師への信頼感を高めることが、望ましい人間関係を育てる上で特に大切である。

 

三、自立性を高める生徒指導

 

最近の児童生徒は、何不自由のない満たされた生活の中で、過保護に育てられてきた結果、依頼心が強く、耐性と根気強さに欠け、困難に打ちかつたくましい気力や体力が身についていない傾向がある。授業中でも、自ら考え自力で解決する意欲や集中力が足りず、安易な態度をとりがちである。

自ら考え、正しく判断し、実践できる人間の育成が強く要請されている今日、個の確立を図り、自主・自立性を育成することは、特に大切である。

生徒指導の真のねらいは、一人一人の児童生徒の理解を基盤とし、個に応じた指導、助言、援助を通して、児童生徒の自己実現を図ることであり、自立性の育成は、この生徒指導のねらいを達成するための重要な課題でもある。

 

自立性を育成するには、児童生徒が自ら考えたり、話し合ったり、活動したりする場と機会をできるだけ数多く設定し、十分に活動できるようにすることである。授業中、児童生徒が自ら課題意識を高めて追求し、解決を図る活動をさせたり、特別活動や創意の時間では、豊かな体験活動をさせるなど、児童・生徒の自立性を高めるための援助活動を十分に行うことが必要である。

 

四、不安や悩みの自己解決を援助する生徒指導

 

児童生徒は、多かれ少なかれ不安や悩みを持っているものである。教師がその不安や悩みをよく理解し、適切な対応をしていくことが、問題行動の予防には特に大切である。

そのためには、教師が児童生徒の気持ちの内面までよく把握し、「子どもがよく見える」教師になるよう努めることが必要である。

しかし、教師の児童生徒理解については、可能な限り理解しようとする姿勢と継続的な積み重ねは大切であるが、やはり限界がある。すべての児童生徒の不安や悩みなど、あまり話したがらない心の内部まで理解するのは困難である。

誰にも悩みを話せなくて、一人で困り果て家出や登校拒否、ついには自殺までするような児童生徒が増加している現状を考えたとき、このような現実逃避型のひ弱な人間にしないためにも、不安や悩みを自力で解決できる、たくましい人間にするための援助指導に力を入れる必要がある。そのためには、内面的指導としての教育相談の機能が有効である。相談によって児童生徒が当面している悩みや様々な問題点を解明したり、情報を提供したり、共感的理解、受容的態度で適切な助言を与え、自主的な自己解決を援助する

 

 

 


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