教育福島0121号(1987年(S62)06月)-010page

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ことにより、指導の効果が十分期待できる。

 

五、家庭・地域社会・関係機関との連携を深める生徒指導

 

積極的な生徒指導の効果をあげるには、家庭や地域社会との連携・協力は特に大切である。家庭や地域社会の教育機能の低下は、生徒指導上むずかしい問題を提起しているが、それだけに学校の役割は大きいと考えざるを得ない。可能な限り、学校の様子を学校だより、学年・学級通信などで知らせ、また、授業参観、学級・方部懇談会、親子面談などを通して協力関係を深めていくことが特に必要である。また、PTAとの協力関係を強化し、校外補導や地境環境の浄化などの地域活動を推進することにより、地域の連帯感、教育機能の高揚を図っていきたいものである。

関係機関との連携については、その組織や機能について十分理解を深めて非行発生時には、適時適切な対応ができるよう、普段から連携・協力体制を確立しておくことが大切である。

 

次に紹介するのは、文部省指定の生徒指導研究学校の研究内容である。各学校の実践の参考にしていただきたい

 

一人一人の自主性を育てる生徒指導

−生徒一人一人が自分の生活を見つめ、

望ましい生活習慣を身に付けさせるの指導−

矢吹町立矢吹中学校

 

一、主題設定の理由

 

(一) 学校・生徒の実態

 

本校は、生徒数九百余名の大規模校であり、過去に生徒による問題行動等により、学校が荒れた苦い経験を持っている。

本校の生徒を個々にみると、明るく素直であるが、自ら学ぶという学習意欲が乏しく、基本的な生活習慣もきちんと身についていない。また、他を思いやり、助け合うという心情も欠けている。

 

(二) 地域の実態

 

本町は半商半農の町で、郡山市、須賀川市、白河市の経済圏と結びついている。校区は矢吹、中畑、三神の三地域に分かれ、それぞれ特色があるが、最近は新興住宅地も増え、新しいまとまりが求められている。本校は町唯一の中学校で、町内の四つの小学校から生徒が入学してくる。

 

(三) 本校教育目標と生徒指導

 

本校の教育目標は

・自ら進んで学習し、身体をきたえる生徒

・きまりを守り、正しく行動できる生徒

・みんなで協力し、仕事に汗を流す生徒

である。ここ数年、三年生の一部が頭髪、服装等の違反をするようになり、それにつられて他の生徒まで問題行動に走る傾向がみられた。この根を断ち切らなければ毎年同じ問題をくり返すことになる。

生徒一人一人に自分の生活を見直させ、基本的生活習慣を確立させることが当面の課題であり、教育目標の具現への道であると考え、本主題を設定した。

 

二、研究の視点

 

(一) 望ましい人間関係の育成

 

生徒相互、生徒と教師の望ましい人間関係を確立することを通し、意欲的な生活態度を育てる。

 

(二) 自己決定の場の設定

 

自己決定の場を設定し、存在感を認め合い、協力する心を育てながら自主的、自発的に行動できる生徒を育成する。

 

(三) 地域連携で生徒指導体制の確立

 

学校、保護者、地域の連携を密にし、地域ぐるみ、町ぐるみの生徒指導体制を確立し、健全な生徒を育成する。

 

三、実践の概要

 

本校のような大規模校において、生徒指導の徹底を図るにはいくつかの観点を設け、全職員が一枚岩となって取り組む以外にない。そうした取り組みをすることにより、生徒や保護者は学校を信頼し、よりよい校風が生まれ育っていくものであると考え、次の八つの観点を設けた。

 

(一) 問題行動の実態を的確に把握し、適切な対処の仕方について共通理解を図る。

 

(二) 個々の生徒の家庭環境や生育歴を把握し、きめ細かい教育相談を実施する。

 

(三) 地域への広報活動をより積極的に行い、学校や生徒への関心を高める。

 

(四) 保護者との連携を密にし、担任と保護者が本音を出して話し合える関係をつくる。

 

(五) 生徒自らが自分の生活を見直す場を意図的に設定する。

 

(六) 教科学習、道徳・特別活動など、学校の教育活動全体を通して自己理解を深めさせる。

 

(七) 授業参観や地域懇談会を定期的に実施し、情報交換を行う。

 

 

 


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