教育福島0121号(1987年(S62)06月)-042page

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養護教育センター通信

 

通常の学級における心身症害児の適応について

 

1、はじめに

養護教育センターでは、所員の共同研究として、「心身障害児の適正就学の進め方に関する研究」を昭和六十一〜六十二年の継続研究として進めています。

研究のねらいは、本県の心身障害児の適正就学に関する実状を明らかにするとともに、適正就学の望ましいあり方、進め方の方向を探ろうとするものです。

研究初年度の六十一年度は、通常の学級及び特殊学級に在籍する心身障害児の適応状況を把握したいと考え、県中地区の小学校五十校を抽出し、心身障害児が在籍する学級の担任を対象としたアンケート調査を行いました。

ここでは、その調査資料を基に、通常の学級に在籍する心身障害児がどのような適応状況にあるかを報告します。

 

2、調査対象

県中教育事務所管内の小学校百六十一校から無作為に五十校を抽出し、各校の児童数の四%の割合で調査書を送付しました。対象校からは、総数三百三十三名の該当児についての回答がありました。通常の学級に在籍する心身障害児は百三十九名(四十二%)で、特殊学級在籍児が百九十名(五十七%)、在籍学級等の記入もれが四名でした。障害別、学年別の該当児数は表1のとおりです。

 

3、調査内容

調査項目は表2に示したとおりです。学校・学級における生活・学習・集団参加・対人関係・遊び・コミュニケーション等に関する適応状況を、(1)いる(2)いない/(1)できる(2)できない等の選択肢と、担任の自由表記による所見の記入という形で回答を求めました。

 

4、障害別にみた適応状況

図1は、9)〜37)項目に対して「〜している/できる/わかる」等と回答された割合を示したものです。

16)〜19)の身辺自立に関しては、精神薄弱と情緒障害児の一〜二名を除き、ほぼできているとの回答でした。

学習の参加や内容の理解、集団参加、コミュニケーション等に関しては、その適応に困難があるとされた者がいました。特に、当然予測されたことですが、学習面では、精神薄弱児と情緒障害児が顕著でした。

視覚障害児、聴覚障害児、病弱・身体虚弱児、肢体不自由児でも、生活面に比べ学習面での適応に困難を示す傾向が認められました。しかし、その数は一〜二で、その中には知的な遅れが疑われる者もおり、今回、回答のあった者については、視覚障害、聴覚障害等により生じた機能障害(disabilty)以外の個人差による問題と考えられます。

(36)は学校生活、37)は学習に関する適応の総合評価を求めたものです。9)〜34)の項目は、あることができるか/わかるか等と質問したものです。9)〜15)は学習に関する能力の回答を、16)〜34)は学校生活に関する能力の回答を求めたものです。これら9)〜15)及び16)〜34)で「わかる/できる」等ど回答された割合と、36)・37)で適応していると回答された割合とを比べてみると、生活面に関して36)での割合と16)〜34)の割合の平均値との差が情緒障害児で五十五%、聴覚障害児で三十%と大きく、学習面に関しても、情緒障害児、聴覚障害児、言語障害児で五十七%〜五十%と他の障害と比べ著しい差がみられました。このことは、心身障害児の適応を評価する時、その子どもの生活能力、学習能力だけでなく、(26)〜33)の結果から推察してその能力よりも)コミュニケーションの困難さに対する印象がその判断の一つとして関与しているためと考えられます。また、適応に対する認識の相違も関係しているように思われます。

図2は、各児の9)〜34)までの項目で「できる/わかる」等と回答された数とそれに対し36)と37)の総合評価がどうであったかを符号で示したものの一部

 

表1通常の学級に在籍する心身障害児の障害別、学年別の数

表1通常の学級に在籍する心身障害児の障害別、学年別の数

 

 

 


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