教育福島0122号(1987年(S62)07月)-008page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

特集

 

国際理解教育と国際交流

 

高等学校教育課

 

今日、科学技術の進展、特に交通・通信の驚異的な発達により、世界は急速にその形を変え、国と国との間の接触の度合は以前とは比較にならないほど増加し、相互に依存し合うような状況になってきた。国が一人孤高を保ち、他国とかかわりをもたずに存続するなどということは不可能になった。それどころか共存を図らなければ国際社会の秩序や平和を保つことが難しい状況になっており、真の相互理解、真の協調が求められている。

ここに全地球的な規模での相互理解、即ち国際理解と、そのための国際理解教育の存在理由がある。国際理解教育はへ今後の人類全体の存亡にかかわると言っても過言でない大きな問題なのである。

一九七四年第十八回ユネスコ総会は、『国際理解、国際協力及び国際平和のための教育並びに人権及び基本的自由に関する勧告』を行い、国際理解のための指導原則として

一、すべての段階及び形態の教育に国際的側面と世界的視野を持たせること

二、すべての民族、その文化、文明、価値および生活様式(国内の民族、文化及び他国民の文化を含む)に、対する理解の尊重

三、諸民族及び諸国民の間に世界的な相互依存関係が増大していることの認識

四、他の人々と交信する(意思の疎通を図る)能力

五、権利を知るだけでなく、個人、社会集団及び国家にはそれぞれ相互に負うべき義務があることを知ること

六、国際的な連帯及び協力についての理解

七、一人一人が、自分の属する社会、国家及び世界全体の諸問題の解決に参加する用意を持つことを挙げ、このような目的を達成するために個人の適性・能力を開発していく必要があることを述べている。

我が国はある意味で諸外国に対する理解を最も求められてきた国であったと言えるだろう。周知のとおり、その国際的な地位は経済の分野を中心に驚異的に向上し、それに伴って我が国に対する外国からの期待、果たすべき役割は増大してきた。しかし、「物」を中心としたその進出は、いたるところで摩擦を生じる結果を生んだこともまた事実である。くしくも前述の第十八回ユネスコ総会勧告が出された年に、中央教育審議会は「教育・学術・文化における国際交流について」と題する答申を出し、国際社会の一員としての義務と責任を果たすために、国際的な視野をもった日本人を育成する必要があることを次のように唱えた。

『我が国が、国際社会の一員として積極的にその義務と責任を果たすためには、国民一人一人が日本及び諸外国の文化・伝統について深い理解を持ち、国際社会において信頼と尊敬を受ける能力と態度を身につけた日本人として育成されることが基本的な課題である。今後は、このような認識に立って、これらの能力を備え、知・徳・体の調和のとれた日本人の育成を目指し、学校教育、社会教育及び家庭教育の全般を通じて改善充実を図る必要がある。特にその場合、国際理解教育、外国語教育等の一層の充実を図り、国際協調の精神を培い、国際理解を深めるよう配慮すべきである』

とし、更に国際理解教育の推進について

『学校教育や社会教育における国際理解教育については、ともすれば観念的な知識としての理解にとどまってしまう点も指摘されている。したがって、今後この教育の推進に当たっては、具体的な実践にまでつながるような工夫をする必要がある。

1) 小・中・高校における国際理解教育の振興のために教育内容・方法を改善するとともに、国際理解のための実践的活動を行う場の拡大についても考慮すること。

2) 青少年及び勤労者を含む一般成人に対する国際性の啓培を推進するために、社会教育の分野において、国際理解を深め、国際協調の精神をかん養する教育活動を促進する具体的な施策を計画すること。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。