教育福島0122号(1987年(S62)07月)-009page

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3) 小・中・高校の教員及び学校教育・社会教育・文化活動の指導者に国際性を持たせるために、現行の海外派遣事業を更に拡充すること』

(『』内はいずれも中央教育審議会答申国際社会に生きる日本人の育成」〔昭和四十九年五月二十七日〕より)

この答申では、教育の面での対応をかなり具体的に述べているし、昭和五十三年改訂の高等学校学習指導要領も明確にこの流れを受け継いでいる。すなわち、その総則の中で「個性豊かな文化の創造と民主的な社会及び国家の発展に努め、進んで平和的な国際社会に貢献できる日本人を育成する」と唱えているのである。

福島県も、前述の世界的状況や国内の動きを踏まえ国際化に乗り出し、昭和六十年八月「国際化を考える県民懇談会」を招集した。この懇談会では、福島県における国際化への対応を問い直し、今後の国際化の進展に対応する総合的・多面的な方策について話し合いを進め、昭和六十一年二月「福島県における国際交流の推進方策に関する提言」を行った。現今の国際化の流れを認め、更に福島県民各層が、産業・経済・教育・文化などのあらゆる分野で活発な交流を展開し、国際理解を深めていくことが重要であるとして、国際感覚を備えた「人づくり」の推進を図ること、そのための機会の拡充を図ることなど国際交流推進のための具体的方策を提言した。福島県は国際理解を深めるための施策を着実に実行に移し、その推進に努めてきたところであるが、この提言により一層強化されることとなった。

 

◇ ◇ ◇

このような各層での国際化の推進、国際理解に向けての諸々の活動の中には、即効性のものと、長期的展望のもとに着実に進められるべきものとがある。教育が担う部分はどちらかと言えば後者に属するものが多いと言えよう。即ち、このような活動の主体となるべき『人』の育成である。その内的変化を図ることである。福島県教育委員会は、この国際化に向けての大きな流れにいちはやく対応し、国際性豊かな人間の育成に取り組んできた。

現在、県教育委員会が推し進めている国際理解・国際交流のための事業は次のようなものがある。

 

(1) 国際理解教育推進事業

国際理解教育推進委員会を設け国際理解教育のあり方を研究し、教育課程の中に適切に位置づけるための指導資料を作成する。

昭和六十一年度

「国際理解教育の進め方」

部数一、二〇〇部

昭和六十二年度

「国際理解教育の実践」

部数一、二〇〇部

 

(2) 国際交流推進研究学校指定事業

高等学校において、国際理解・国際交流のあり方を具体的に実践研究する。

昭和六十・六十一年度

須賀川女子高等学校

昭和六十二・六十三年度

棚倉高等学校

 

(3)語学指導等を行う外国青年招致事業

国際化の時代に生きる人材を育てるため、英語教員とともに語学指導を行い(英語指導助手)あるいは地域住民と交流し文化の面から相互理解を図ることに従事する(国際交流員)外国青年を招致する。

昭和六十二年度 二〇名

英語指導助手 十九名

国際交流員 一名

後述の須賀川女子高等学校は前記(2)の「国際交流」研究指定校に当たっている。当然のことながら、このテーマはこれまでにはなかったまったく新しいものであり、須賀川女子高校の実践・研究は、模索の中から生み出された意欲的、先導的なものである。二年間にわたり職員、生徒更には地域が一丸となって取り組んだものの成果であり、高く評価されるものである。

 

◇ ◇ ◇

「国際理解」とか「国際交流」とか国際化に関連した語が種々飛び交っている。これらの語はさまざまに理解されている。「国際交流」に例をとれば、まず最初に考えられるのは、具体的な人と人の交流、人の移動である。もうひとつの交流は、単なる人的あるいは物的交流ではなく、心と心の交流、思想の交流である。この意味の「国際交流」は「国際理解」と同義であると言える。少なくとも学校教育の中では、このような考え方が成り立つものと考えてよいであろう。

ところで、国際理解であれ国際交流であれ、我々はひとつの前提を踏まえた上で話を進めていることを確認しなければならない。その前提とは、世界に目を向けようとしている我々は日本人であるということである。日本人として、自国の文化や伝統に誇りを持つことなしに、他国に対する真の理解はあり得ないということである。世界に目を向け、理解を図ろうとする我々の拠って立つところは日本なのである。そうであればこそ、我々自身が“日本”を理解し誇りに思うことができることが是非必要なのである。

今後とも我々は国際化に関する研究や実践を続けていくことになるが、このことは常に銘記せねばならないことであろう。

 

 

 

 


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