教育福島0122号(1987年(S62)07月)-010page
国際理解教育と文化交流の推進
−国際性のある心豊かな人間の育成をめざして−
県立須賀川女子高等学校
一、本校の現状
本校は、一学年六学級の中規模普通高校である。生徒は概して温和で、素直であり、学習に部活動に真剣に取り組んでいる。生徒の進路は約六十パーセントが進学、四十パーセントが就職で、この傾向はここ数年変わっていない。
学校創立二十六年目を迎えた歴史の新しい学校であるが、昭和四十四年から地元の須賀川ロータリークラブと提携して、オーストラリアの高校と定期的に留学生交換を実施している。
国際交流が年々活発化していく現代にあって、本校は六十年度・六十一年度の二年間にわたり、福島県教育委員会より「国際交流」研究校の指定を受け、国際化時代にふさわしい高等学校教育のありかたを模索して研究を実践した。
二、研究主題
国際理解教育の研究ならびに文化交流の推進
−国際性を身につけた心豊かな人間の育成をめざして−
三、主題設定の理由
「進んで平和的な国際社会に貢献できる日本人を育成するため、その基盤としての道徳性を養う」ことが、高等学校学習指導要領の前文に掲げられており、国際化社会の進展に対応できる国際感覚を身につけた人間の育成が社会的に要請されている。本校では「創造的思考力を高め、国際的視野に立って民主社会の発展に役立つ人間を育成する」ことを教育目標の一つに掲げ、時代の要求にこたえようと努力している。今回の指定研究を契機とし、国際化時代の高等学校教育のありかたを求めて研究主題を設定した。
四、研究計画
(一) 研究内容
次の研究内容によって研究主題の追究を図った。
1) 社会科、英語科などの各教科では、国際理解を図るための教材内容と指導方法の研究を推進する。
2) 特別活動のロングホームルームでは、各学年に応じた国際理解に関する主題を研究するとともに、生徒の自主的活動の推進を図る。
3) 特別活動の生徒会活動や学校行事では、芸術科、家庭科などの協力のもとに文化交流の実践を通して、国際理解に関する意識の変容を図る。
(二) 研究方法
次の研究方法によって研究内容を実践した。
1) 教職員を対象とする校内の研究会や研修会を持ち、教職員の国際理解や文化交流に対する認識を深める。
2) 主として、オーストラリアから日本に留学している高校生を招待し、生徒会活動を通して交歓の機会を設ける。
3) 駐日オーストラリア大使館員の派遣を要請して、講演会を実施する。
4) 英語指導主事助手その他を招へいし、国際理解教育のための研究を行い、講演を実施する。
5) 日本語の講座を持つオーストラリアの高校のなかから姉妹校を選定し、交流を図る。
6) 校内に「国際理解コーナー」を設け、資料を展示して、生徒の国際的興味や関心を高める。
7) 須賀川ロータリークラブやオーストラリア大使館などとの連携を密にして研究を推進する。
(三)研究組織
1)「国際交流」の研究のために、校内に研究組織を作った。(図1参照)
図1 国際交流研究組織
五、国際理解教育
(一) 社会科
1) 研究の主眼
社会科における国際理解教育の研究は、社会科の各科目によってそれぞれ異なるアプローチのしかたがあるが、今回は、各科目に共通するテーマとして「異文化の理解」のみを取りあげて研究を進めた。
およそ、それぞれの国の文化には、人種や国境を超えた普遍的な要素と、その国の民族に特有の独自な要素が含