教育福島0122号(1987年(S62)07月)-011page

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まれているが、現代の国際社会は、主として欧米の文化や制度を基盤として形成されているので、どちらかといえば、欧米の文化により多くの普遍性が認められ、欧米以外の国々の文化は、その特殊性がことさらに強調され、敬遠されてきたきらいがあった。

本来その国の文化はそれ自体に固有の意味があり、文明度の価値尺度で優劣を評価できる性質のものではないという見地に立ち、今回の研究に当たっては、普遍的な文化としてヨーロッパの近代思想を、また、特殊な文化として日本文化とイスラム文化を対象に、次の研究を進めた。

2) 実践

日本文化については、社会科担当者全員が研究協議し、特に国際理解に障害となっている要因を検討した。ことばの障害、ことばに対する価値観の違い、文化と民族性に由来する国際的閉鎖性、情緒的・集団的思考と行動の様式などが取りあげられた。

イスラム文化については、世界史の授業を通して実践的な研究を進めた。現在、アラブ世界は石油問題やテロ事件などで世界の注目を集めているので、生徒の反応にはかなりの手ごたえがあった。とりわけ、イスラム教徒の日常生活に最も強い興味を示したが、より内面的な信仰の世界を、実感として理解させるには限界があるように思われた。

ヨーロッパの近代思想については、現代社会の授業の中でイギリスの経験論と大陸の合理論を取りあげて実践的な研究を進めた。経験論と合理論は、現代の欧米人のみならず国際社会においても日常化された思考と対話の様式となっているので、さまざまの具体例をあげて生徒の抽象的思考の覚醒を促したが、一年生にはいささか荷が重すぎたという反省もなされた。

世界史と現代社会の授業実践に付随して、両科目の年間指導計画のなかに国際理解教育がどのように位置づけられるかの研究も、併せて行った。各単元ごとに国際理解教育との関連事項を併記したことで、国際理解教育を意識した授業の展開が可能になったように思われる。

以上の二年間の実践から、異文化を知識として理解させることはある程度までできても、将来の国際化社会に適応し得る資質や能力を十分に養うという目標に到達するには、考慮すべきさまざまの課題が残されているように思われる。

 

(二) 英語科

1) 研究の主眼

英語科における国際理解教育の研究ではまず第一に必要なことは、意思の伝達の役割を果たし、相互理解を可能にするのに不可欠な、言語の習得である。特に英語の運用能力を養うことである。もう一つ大切なことは、主に英語を通して異文化を理解し、外国人の生活やものの考えかたを理解することである。最近の英語の教科書は物語が少なくなり、解説や評論が多くなってきて、教科書を読むことによって外国の事柄について一層よく知ることができるようになっている。英語科としては、これらの教科書の内容を計画的に補充したり、今日的な生きた事象と結びつけたり、更には日本文化と比較させたりして異文化理解の基礎を培うことや、他教科では教える機会が少ないコミュニケーションのルールやマナー、単語のイメージの違い、文の構造における日本語と英語の違い、ジェスチャーの意味における彼我の違い、論理の組み立て方の違いなどを主眼にして指導した。

2) 実践

ア) 英語1)・英語2)年間指導計画の作成

本校で使用している英語1)および英語2)から国際理解にかかわる事柄を選び年間指導計画を作り、授業の中で実践した。

イ) 英語発音の基礎演習(第一学年)

一年生の初期に、ビデオ教材を用いて発音・イントネーション・リズムなどの基礎的な事柄を指導した。

ウ) NHK続基礎英語の活用(第一学年)

土曜日放送分のみ(トピックス・オブ・ザ・ウィークとリッスン・アンド・ゲス)を録音し授業に組み入れた。やさしい問題であり、しかもテスト形式も興味あるもので、生徒は楽しみながら勉強でき、正答率もよかった。

エ) その他のビデオ教材の活用(全学年)

NHKテレビ学校放送・市販のビデオ(リンガフォン協会発売のものなど)その他一般のテレビ放送のうち国際理解に役立つと思われるものを集録し、適宜授業の中に取り入れた。

オ) 英字新聞の利用(全学年)

毎日新聞、読売新聞の英語版の記事を取りあげ、教材として利用した。

カ) MEF制度の活用(全学年)

本校では福島県教委のカール・サンドバーグ先生に年三回来てもらい、英語の授業をしてもらった。使用している教科書を用い、特にコミュニケーションの手段としての英語に対する興味、関心、運用能力に力を注いだ。

キ) 一分間スピーチの練習(全学年)

発音や文法に拘泥せず、英語で話す

 

国際理解公開討論会

国際理解公開討論会

 

 

 


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