教育福島0124号(1987年(S62)09月)-051page

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世界の教育は、今。

海外教育事情の紹介

創造性を育てるために

「まちがえる自由」を保障

−ハンガリー−

学校訪問から

アラニャーノシュ小学校は、八学年(六〜十四歳)四十学級、生徒数七百八十名、教職員五十三名、上級学校進学率は百パーセントである。

この学校の特色は、文豪アラニャーノの石像が中庭にある百十六年の歴史を誇る伝統校である。教育に対する姿勢で「考える力をつけること」は重要な課題であるというとらえ方をしており、子どもたち全員に独自に考え、書く、ということを取り入れている。そのため「静かに」ということが強調され、子どもたちに「まちがえる自由」が保障されている。

一年(九月入学のため、入学してからまだ一か月余)の算数の授業を参観。

算数教育は、レーナード・フィッシング博士の心理学の研究成果に基づくもので、目標達成のために最適なプログラム化された問題集を使用、よりよく考え、精選された教師の発問によって、児童は、考え解答する。相互の発表と教師の指導によって自己評価を加えていく。

考え抜く学習に耐えるには各学年段階での躾(学習と生活面から)が達成されなければならず、特に、幼稚園教育の重要さを強調していた。

「まちがうことを恐れさせないようにしなければ子どもの創造性は育たない」という校長先生の教育の方針のもとに、着々と新しいハンガリーの教育が進みつつあることを感じた。

「考える力をつけること」が学習の大きな目標

「考える力をつけること」が学習の大きな目標

教育制度

ハンガリーの教育制度は、昨年(一九八六年九月)より、新教育法が施行された。

一、紀元二千年までの長期的教育計画である。

二、各教育機関に独立した機能を持たせる。

三、教師・生徒・親との間の民主化を拡大する。

の三点であるが、基本的な体系は変わっていない。義務教育は無償で、六〜十六歳の十年である。

小学校への準備教育として、就学前教育が重要視されており、三歳〜六歳未満の児童を対象に幼稚園教育が行われている。

六歳に達した児童は、初等学校の第一学年に入学する。初等学校は八学年で、一学年〜四学年(下級課程)と十学年〜八学年一上級課程一に分かれている。下級課程では、一人の担任教師が全教科を指導し、上級課程では教科担任制となる。初等学校のねらいは、生徒の基礎的な技能及び個性を発達させることであるが、とりわけ、新しく学習するための基礎基本と学び方や学ぶ意欲を培うことが重要視されている。また、社会生活の基礎・社会主義的愛国心・労働の尊重といった社会が要求する価値の基礎を培うことも大切な機能である。

八学年の課程を修了すると中学校へ進むが、八年間で修了できなかった場合は、さらに二年の猶余がある。

伝統校アラニャーノシュ小学校の子どもたちと

伝統校アラニャーノシュ小学校の子どもたちと

昭和六十一年度教員海外派遣短期東北ブロック団四八一団

会津若松市立神指小学校教諭 成田正守


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