教育福島0125号(1987年(S62)10月)-049page
ウ、講座内容と運営
精神薄弱特殊学級は、障害の程度が軽度で、通常の学級での学習が困難な児童・生徒を対象として編制するためその教育課程は、学校教育法施行規則第七十三条の十九に基づいて、特別な教育課程を編成・実施することになります。その上、精神薄弱児の諸特性を考えると、その障害が改善されたという理由で特殊学級から通常の学級へ移籍することは極めて困難なことです。それだけに、この教育を推進する上で、精神薄弱児であるかどうかの見きわめが非常に重要な意味をもってきます。
そこで、本講座では、教育・心理・医療面からの軽度精神薄弱児の理解、学級経営、指導内容・方法、指導形態等の基本的事項について、専門的内容を中心に運営しています。
2)軽度心身障害教育研修講座
−病弱・身体虚弱−
ア、期日 六月十六日(火)〜十八日(木)
イ、参加対象
養護教育経験一年以上の小学校病弱
・身体虚弱特殊学級担当教員
ウ、講座内容と運営
病弱・身体虚弱学級は、医療面からの指示・助言を参考として、教育サイドから健康回復・改善の援助を主眼として設置されています。この援助が必要な児童・生徒にとって、週二〜三時間の「養護・訓練」の時間のほかは、通常の学級で学習するという方式によって、内在する自然治癒力が強化・促進されるかどうかは、はなはだ疑問です。まず、学校教育活動全体にわたって健康回復を促進するねらいが具現された活動の場が用意されるとともに、学校におけるこの学級の位置づけが明確にされなければなりません。
そこで、本講座では、病弱・身体虚弱児の病態のとらえ方、教育・心理面からの理解と処遇、学級経営、指導内容・方法等の基本的事項について、専門的内容を中心に運営しています。
3)軽度心身障害教育研修講座
−情緒障害−
ア、期日 六月二十三日()〜二十五日(木)
イ、参加対象
養護教育経験一年以上の小・中学校情緒障害特殊学級及び精神薄弱特殊学級担当教員
ウ、講座内容と運営
情緒障害児教育のねらいは、情緒の問題によって、学校・社会生活に適応できない児童・生徒に対し、特別な学級を編制したり、特別な配慮をしたりしてそれらの問題を改善し、軽減するところにあります。情緒障害といづても、その原因や障害の程度はさま、さまで、どのような場で、どのような指導を行うのがよいのかについて、広い視野から見きわめる必要があります。
そこで、本講座では、情緒障害児の教育・心理・医療に関する基本的事項について、専門的内容を中心に編成しています。なお、本県のこの学級の傾向から、自閉児の内容を多く取り上げています。
おわりに
本年度に計画した軽度心身障害教育研修講座は、おかげさまで全部終了しました。
特殊学級の盛衰は、その学校の教育実践の確かさを測る物差しであるという見方があります。この視点から見れば、現行の特殊学級制度の存続と、この教育の質的な改善・充実への努力が本県養護教育の最大の課題となります。
ところで、障害は、老いの問題と共通に、相反する二つの側面を持っています。一つは、障害を受けたことが、障害者自身や親たちの言い訳の口実となり、人間を小さくしてしまう側面です。ここでは、障害者は不幸な人、自分は健康な人間に生まれてよかったといった受け止め方しかできません。もう一つは、障害を受けたことが、むしろ本人にとって新しい、より深い人生を切り開くきっかけとなり「人間を大きくする側面です。これは、「目あきは不便なものだ」といった塙保己一の有名なことばに代表されます。ここでは、重度障害者も社会の一隅を照す人として理解されることになります。
これからの養護教育は、障害者のマイナス面ばかりを強調しないで、障害の持つ大事な深い意味を土台にして築いていく必要があります。
実技「教材・教具の製作」
「自閉児の医学」の講演のひとこま