教育福島0126号(1987年(S62)11月)-008page
特集〔1〕
道徳教育の展開
義務教育課
はじめに
文部省指定道徳教育推進校(学校・家庭連携推進校一の田島町立田島小学校が去る十月十九日に、伊達町立伊達中学校が十一月五日に、二年間にわたる研究の成果を発表しました。
両校は、学校における道徳教育の効果を高めるため、家庭や地域社会との連携をいかに図り、一貫性をもった指導をどのように推進していくかを中心に据えて研究を深め、実践を積み重ねてきたもので、それぞれの研究は、各校における道徳教育の充実に、多くの示唆を与えるものと考えられます。
豊かな心・自分から実践できる力を育てる道徳教育
−家庭との連携による効果的な実践指導のあり方−
田島町立中島小学校
一、研究主題設定の理由
急激に変化する社会環境にあって、児童の耐性や自律性及び社会連帯意識などの希薄さが指摘されてきており、道徳教育の充実については家庭との連携による指導の充実が強く望まれている。このような状況の中で従来からの学校の働きかけにより、各家庭での道徳教育に対する関心は高まってきているが、発達段階を考慮した基本的生活習慣の指導についてはまだ十分とは言えない。
また、今まで本校では、教育目標の「思いやりのある子ども」を大きな柱とし、教育活動全体を通して道徳教育を行ってきたが、児童の道徳性や基本的生活習慣の定着について多くの課題を残している。
こうした実態をふまえ、道徳教育指導計画を改善し、道徳の時間や諸教育活動の充実を図るとともに、家庭との連携により、児童一人一人の道徳的実践力を育てるためにこの主題を設定した。
二、研究主題のとらえ方
(一) 豊かな心
(1) 感動する心
花を見て「かわいいなあ。美しいなあ」と感じたり、注意してくれる人に対して「やさしいなあ。友だち思いだなあ」と感じることができる児童を育てたい。また、困難を乗り越える強い意志に心打たれたり、動物親子の愛情の細やかさ、きびしいしつけに感動できる心情などを豊かな心の一面ととらえたい。
(2) 思いやりと感謝の心
好ましい人間関係を保ち、明るい社会生活を営んでいくためには、お互いの思いやりの心が大切になってくる。反省の心を表す「すみません」や、感謝の心を表した「ありがとう」などのことばは、相手を思いやる心と態度の表れであろう。こうした心情を豊かな心ととらえたい。
(二)実践できる力
道徳性に支えられた行為を身につけようとする道徳的実践の指導は、児童の道徳的判断力を高め、道徳的心情を豊かにし、道徳的態度と実践意欲の向上を図るなど、道徳的実践力の育成を目指している。
人は常に他律的であっても、具体的な道徳的実践を積んでいくことによって、内なる力が育ち、自律的動機となる。
このように、意図的な道徳的行為の体験によって、自分から実践しようという自律的行動が生まれ、道徳性をさらに高めていこうとする力が育っていく。これを「実践できる力」ととらえることにした。
三、研究の見通し
(一) 道徳の時間における指導
一人一人の児童に道徳的諸価値を気づかせ、自分を見つめさせることにより、道徳的な心情や判断力を育て、実践意欲の向上を図ることによって、道徳的実践力を育成する。
(二) 日常生活における指導
意図的、計画的に実践場面を設定し、道徳的に望ましい行いをすることの喜びを味わわせ、内面的な資質の育成を目指す。
(三) 家庭との連携による指導
道徳教育に対する意識の高揚と一貫性のある基本的生活習慣の指導に当たる。