教育福島0126号(1987年(S62)11月)-013page

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い声で「おはようございます」と帽子を取りてあいざつをしてくれたのを見て、うれしくなりました。その後、ぼくも大きい声で「おはようございます」をいうようにしています。

 

(五) 学校と家庭連携による道徳教育の展開

(1) 学校・家庭連携推進会議の設置

学校の道徳教育の推進に当たり、家庭、地域社会と連携し、協力を得て学校内外において一貫した道徳教育を行うために推進会議を設置した。

学校における道徳教育の目標や内容、実態、さらに本研究の趣旨の理解を得るとともに、家庭や地域社会の考えや要請をくみ取る。また、学校・家庭の連携の在り方についても審議を行っている。委員は、学校・家庭(PTA)、地域からの代表二十六名で構成し、年二〜三回の会議を開催している。

会議をとおして

1) 道徳教育について理解を深めてもらうとともに、教育全般にわたって保護者や地域の生の声を聞くことができた。

2) 生徒の校外生活の状況や教育に対する提言など有意義な発言が多かった。

3) 委員の方々が他の会合等でも中学校の道徳教育について話題にし、地域への浸透にも役立っている。

4) 町や地域行事への参加なども円滑に行うことができた。

(2) 道徳教育のしおり「こころ」の発行

学校の道徳教育のねらいや内容、実態などを具体的に、わかりやすく解説したり、保護者の家庭における実践例などを載せて、家庭における道徳教育に役立てるようにした。すでに第三集まで発行、全生徒の家庭に配布し、活用されている。そして、多くの保護者より感謝や活用例が寄せられている。1

 

保護者の感想文より

 

「こころ」を読んで{いかに心が貧しいかを痛感いたしました力世の中が忙しいせいか、共働きが多くなり、子どもと接する時間の少なさ、物をすぐ買い与えることなどが、耐性のない無気力な人間にしてしまう原因ではないでしょうか。

家でも、朝起きたら必ず「おはよう」「おやすみ」「こんにちは」など、ことばをかけ合うようにしています。そして「はい」という返事も大切なしつけとしています。

 

(3) 道徳の時間の授業参観

PTAの授業参観は、昨年から全学級で道徳の授業参観を実施している。授業の内容や参観の観点をまとめたものをあらかじめ配布したり、授業参観のあとでの学級懇談を設けるなど、学校での道徳教育に対する理解と関心を得るように家庭生活でも実践化できる働きかけを行っている。

参観日は以前は平日であったのを日曜日としたり、特に父親の参観を呼びかけるなどした結果、現在では出席率は八十パーセント以上となり、保護者の道徳教育に対する関心は高まっている。そのほか、教育講演会の折には、特に道徳教育の問題を含めた内容にするなど保護者の関心の高揚にも努めている。

(4) PTA等の実践活動の高まり

PTA活動でも協力体制が一層高まりつつある。校外補導委員会では、生徒の作ったあいさつ標語を立看板にして各方部に立てたり、環境委員会では親の奉仕作業に生徒も加えて親子奉仕作業をしたりするなど、生徒の高まりをめざす活動が出ている。また、方部育成会や婦人会でも、あいさつ道路を指定し、立看板を立てるなど、地域ぐるみの協力体制ができつつある。

 

四、研究の成果

(一) 教師について

定例の研修会、授業研究、日々の研修活動を通して道徳教育の重要性を認識するとともに、教師自身、あいさつの呼びかけや、けじめある生活指導を通し、自らも高まっている。一つの例として、授業始めのチャイムを教室で聞こうとしていることや机上の整理などもよくなっている。また、道徳の時間の指導に積極的に取り組んでいることは一つの高まりと考えられる。

(二) 生徒について

一進一退の繰り返しではあったが、道徳的なものの見方や感じ方が生徒の日常生活に行為として見られるようになり「あいさつ」や「けじめ」のある生活が送れるようになっている。例えば、登校時に元気なあいさつが多く聞けるようになったことや、遅刻をする生徒はほとんどなくなったことなどはその表れである。あいさつは、自分と相手の存在を認めることであり、けじめは自分と相手を尊重することにもなるとすれば、望ましい生活習慣の定着のあらわれと考えられる。

(三) 保護者について

道徳の時間の授業参観、教育講演会や道徳のしおりなどを通して学校での道徳教育についての認識が高まり、家庭や地域社会の子どもに接する態度に教育的配慮が多くみられるようになっている。

 

五、今後の課題

(一) 今回の指定により策定した諸計画、実践項目の継続的実践とその妥当性の検証を進めていく。

(二) 「あいさつ」「けじめ」を軸とした基本的な生活習慣を身につけるための意欲づけと行動化の継続的指導を積み重ねる。

(三) 道徳の時間の指導の有り方と道徳的実践力の育み方について一層追究を深める。

(四) 家庭・地域に対する道徳教育の啓発の継続と教育力の発揮のさせ方の工夫を推進する。

 

 

 


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