教育福島0127号(1987年(S62)12月)-015page
学習指導の展開
高等学校
近年、臨時教育審議会等において、個性重視がうたわれ、学校教育の場で生徒の個性を最大限に伸ばすことが求められている。
生徒には、それぞれ能力・適性・興味・関心・進路等の個人差があり、これらの個人差に対応する指導のあり方が問われているが、ここに、数学、英語、商業の三教科の学習指導についての実践例を掲載し、今後の参考に供したい。
数学
習熟度別授業について
県立白河女子高等学校
教諭 徳永光男
本校において五年前から導入している習熟度別授業の実施状況について述べてみたい。
一、とり入れた理由
近年、本校生徒の高校入試における学力差は広がる傾向にあり、特に、数学においては、一桁の点数から満点に近い点数までに及び、他教科とくらべて、そのちらばりが大きい。
また、学習に対する適性、興味、関心が多様化すると共に進路においては、国公立大文・理系、私立大文・理系、短大、高看をふくむ専門学校および就職に至るまで、その志望状況がきわめて幅広くなっている。
これらの状況を踏まえて、それに対応した指導形態・内容を工夫していく必要があるが、その具体的方法としては、「自然学級における指導の個別化」と「習熟度別学級による指導」が考えられ、いずれも特色があるが、本校では、先導的試行の意味もふくめて、一年生に後者の方式を導入している。
二、ねらい
学力差に対応する教材を精選・構造化することによって生徒の理解度を高め、学習内容の消化不良からくる学業不振および学業不適応者をなくすとともに、学力上位者の「伸び悩み」を解消する。そして、数学に対する苦手意識、違和感をとり除き、興味、関心を育てながら、自信と親しみを持たせる、
三、実施方法
1、コース編成について
(1) コースの作り方
一学年九クラスを、三クラスずつ三つのグループに分け、各グループを「発展コース一クラス、普通コース二クラス」とした。「上・中・下三コース」としなかったのは、生徒たちの劣等感等に配慮したものである。
(2) 生徒の分け方
コース編成には、成績だけでなく生徒の希望も取り入れた。これは、生徒の興味、関心、意欲、進路等にも対応しょうとしたからである。
なお、高校入試の成績だけでなく、さらに一〜二回のテストを行い、クラス分けの資料に加えている。
(3) コース編成までの手順
ア、保護者への趣旨説明
・プリント配付(合格発表の日)
・説明会(入学式当日)
イ、新入生への説明(オリエンテーション当日、三月下旬)
ウ、入学直後に一〜二回のテスト実施
エ、生徒の希望調査
分け方は、原則として、生徒の希望を第一とし、成績によって人数を調整する。ただし、成績が極端によいか、わるい場合は、成積を優先させることがある。
(4) コースの入れかえ
学期ごとに行うたてまえであるが、二学期終了後については、必要度が低いと思われる場合、入れかえを行わないことがある。
入れかえは、生徒の成績と希望の両方を考慮して行う。
一般に、本校では、普通コースの上位者が、ゆとりと自信を持つことによって伸びやすく、発展コースの下位者は学習内容の不消化と自信のなさから、伸びなやむ傾向がある。
コースの入れかえには、これらのことに配慮する必要がある。普通コースの上位者が発展コースに移って、さらに伸びる場合もあるが、逆に伸びなやむこともある。また、発展コースから普通コースに移って、学習意欲を失ってしまう場合もあるので、入れかえは慎重に行う必要があり、本校では、入れかえは各コース一割程度としている。
2、コースに対応する教材について
習熟度別授業においては、コースに対応する教材の選び方が、一つの重要なポイントである。クラスの入れかえ、テスト、評価等の問題があるので、コース別に教科書を採択することはできない。しかし、同一教材、同一進度では、習熟度別授業のメリットを生かすことが難しい面があるので、昭和六十二年度は、「同一教科書による二段階方式」を考え、実施している。
「基本事項」と「発展事項」が明確に区分されていて、かつ基本事項がわかりやすく、さらに発展事項が進学にも対応できる内容をもつ教科書を選んだ。