教育福島0127号(1987年(S62)12月)-016page
数学1)のうち、原則として、発展コースのみが学習する事項を、次のように定めた。
第1章『数と式』では、「組立除法」(原理と方法)と「第1章の問題B」。
普通コースで組立除法を扱う場合は、計算方法だけとする。
第2章『方程式と不等式』では、「第2章の問題B」。
第3章『関数とグラフ』では、「直線と無理関数のグラフの関係」と「ガウス記号および絶対値記号のついた関数とそのグラフ」および「第3章の問題」
第4章『三角比』では、「Sin18度の求め方」と「ヘロンの公式」(導き方と用い方)および「第4章の問題」。
普通コースでは、ヘロンの公式は、「用い方」だけを扱う。
第5章『平面図形と式』では、「点と直線の距離」と「第5章の問題B」。
3、コースに対応する指導について
同一教材でも、普通コースと発展コースでは、その理解力に応じて、説明のしかた、取り扱い方に配慮が必要である。
普通コースでは、個別的、具体的なものから入り、一般的、抽象的なものへ進むという原則が大切である。
例えば、導入の段階で、最初に任意定数を使うことを極力さけ、具体的な数字から入る。発展コースでは、必要に応じ、任意定数を使う。
関数のグラフの扱い方で、普通コースでは対応表を利用する方法を多く用い、発展コースでは、平行移動などを利用する。
普通コースでは、練習問題を解くときに「例題と解き方」という教材を与えて使わせ、少しずつ自信をつけさせる。
4、コースを考慮したテストと評価について
教える内容、レベル、取り扱い方に違いがある場合、共通学習部分からだけ出題すれば、発展コースでせっかくハイレベルの学習をしたことが、問題として出せないことになるし、発展コースだけが学習したハイレベルの問題を出せば、普通コースの生徒には歯が立たない。しかし、問題をまったく別にすると、評価の公平さを保ちにくい。
そこで定期考査においては、普通コースと発展コースの共通問題を7〜8割とし、残りの3〜2割は、各コースに対応した問題を作ることによって、習熟度の内容に対応すると同時に、評価の公平さもできるだけ保つように配慮している。
このやり方でも発展コースの生徒にとって評価はいくぶん不利となるが、これについては、将来の進学等のための実力養成に重点をおくという考え方に加えて、学年末の最終評価の際に、一年担当者の話し合いにより、発展コースの生徒に不利になりすぎないよう若干の配慮をしている。
四、アンケート調査による生徒の感想
(資料1参照)
(1)習熟度別授業に「満足」と「やや満足」が約4割で、「不満」と「やや不満」のおよそ2倍である。(残りは「どちらでもない) 〔調査A〕
(2)「満足」と「やや満足」の主な理由は、普通コースでは、「自分の力に合ってやりやすい」が約6割で、発展コースでは、「よい刺激になる」と「授業に張り合いがある」が併せて約6割であった。 〔調査B〕
(3)「不満」と「やや不満」の理由として、普通、発展いずれのコースでも、「進み方が早い」が多かった(約3割)。それに対し、「差別感」は約1割で、それほど多くない。このほか「教室移動がわずらわしい」、「クラスが分かれるのでいやだ」、「合併クラスがなじみにくい」、「友だちに教えてもらいにくい」「習熟度でない授業よりもわかりにくい」、「HRTの授業が受けられない」などがあった。 〔調査C〕
(4)「習熟度別授業は、自分の学力向上に効果があると思うか」に対しては、「ある」が約3割、「ない」が約2割で、発展コースの方に「ある」と答えた生徒が多かった。 〔調査D〕
(5)「合併クラスのふんい気になじめたか」については、「すぐなじめた」が約6割で、「なじむまでに時間がかかった」と「なじめなかった」が、併せて約4割であった。
(6)「差別感」については、「持った」のが、昭和五十九〜六十年度では、二十五パーセントあったが、六十一年度では、十七パーセントに減少している。特に、「なんとも思わなかった」が、五十九〜六十年度では、普通コースで十五パーセントだったのが、六十一年度では、五十七パーセントに増加しているのが目立っている。
(7)「教室移動」について、「気になる」は2割余りで、「気にならない」は約5割である。「やむを得ない」は約3割である。
(8)「学習への興味」について「前より興味がわいてきた」と「興味がなくなった」は、いずれも十五パーセントで同じである。一これは、中学生のときとの比較であり、生徒自信は高校における「自然学級」との比較はできない) 〔調査E〕
(9)テスト問題については、普通コースと発展コースの問題が、「違う方がよい」は、普通コース約3割、発展コース約1割で、「同じ方がよい」は、普通コース約2割、発展コース約5割である。
(10)普通コースと発展コースの入れかえについては、「した方がよい」が約3割で、「しない方がよい」の約2割よりやや多い。
(11)教科書については、「ちょうどよい」が約7割、「難しい」が約3割で、「やさしい」と思うものはわずかである。